最終更新日 2019/10/28

出血性ショック

出血性ショックとは・・・

出血性ショック(しゅっけつせいしょっく、hemorrhagic shock)とは、出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。循環血液量減少性ショックの一つである。

 

外傷や、消化管などからの出血によって、大量の血液が失われることが原因である。術後出血が原因となることもある。

 

出血すると、体内の循環血液量が減少する。体内では重要な臓器に血液を循環させるために、交感神経反射により血圧の維持が試みられる。血液量の15%未満(クラスI、体重60kgで約600mL)までの出血であれば血圧、脈拍とも維持されるが、軽度の不穏となる。
しかし、15~30%の出血(クラスII、600~1,200mL)で軽度の血圧低下と頻脈呼吸数の増加が見られるようになる。30%以上の出血(クラスIII、1,200~1,600mL以上)では交感神経反射による代償が破たんし血圧低下が明らかとなり、脈拍も頻拍、微弱となる。35%以上の出血(クラスIV、1,600mL以上)となると重度の出血性ショックとなり、救命率が低下する(表1)。

 

表1出血性ショックの分類

 

症状

特に呼吸不全(頻呼吸)はショックの重要なサインの一つである。血液量の減少により組織への酸素供給が減少すると、酸素を利用した代謝(好気性代謝)ができなくなるため、酸素を使わない代謝(嫌気性代謝)が主となり、代謝産物としての乳酸などが蓄積する。過剰な乳酸により酸性となった血液を中性に戻すため、代償的に呼吸数が増加(頻呼吸)する。

出血により体温が奪われて生じる低体温や、止血のための凝固因子が消費されて起こる凝固障害、体内が酸性に傾く(代謝性アシドーシス)が加わると、さらに止血困難となり悪循環に陥る。出血の発生から死亡までは中央値約2時間と言われており迅速な対処が必要である。

 

検査・診断

ショックの診断には、以下の項目が用いられる。
心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
低血圧収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
尿量:0.5mL/kg/時
意識障害が見られる

 

ショックの診断は、意識障害、乏尿、末梢性チアノーゼなどの所見と、発汗(冷汗)、頻脈、頻呼吸などの代償機構が働いていることを示す徴候によってなされる。

 

さらに、血液検査でのヘモグロビン値の低下(超急性期は低下していないこともある)とともに、超音波検査、単純・造影CT、内視鏡検査などによる出血部位の同定と併せて、出血性ショックを診断する。

 

治療

出血性ショックの治療方法は、まず患者の出血量を推定し、それに応じた量の輸液や輸血(血液型が同定されておらず、緊急を要する場合にはO型+の輸血を用いる)を施す。これと同時に、出血部位に対して止血を行うことが必要とされる。出血性ショックが遷延した際には、気管挿管が必要となる。

 

引用参考文献
1)Jeremy W,et al.Hemorrhagic Shock.The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE.378,2018,370-379.
2)ATLS student course manual 10th edition.American College of Surgeons,2018,391p.(ISBN:9780996826235)
3)志賀 隆監.ER・救急999の謎.メディカルサイエンスインターナショナル,2017,658p.(ISBN:9784895929028)

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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