白血球の働き|白血球の種類と機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、白血球の働きについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
白血球の種類
白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5種類がある(このような白血球の分類を白血球分画という)。このうち、好中球、好酸球、好塩基球を顆粒球という。最も多いのは好中球で、次に多いのはリンパ球である。このため、顆粒球や多核球といえば好中球を、単核球といえばリンパ球を指していることも多い。
疾患によって白血球の数や分画は変化する。このため、白血球数や分画を調べると、診断の手がかりとなる。一般に、細菌感染では好中球が増加し、ウイルス感染ではリンパ球が、アレルギー疾患や寄生虫疾患では好酸球が増加する。体内には白血球の貯蔵場があり、必要に応じて血液中に動員される。白血球は目的地へ自発的に進むことができる。これを遊走という。
身体の状況によって白血球数は変動するが、成人の場合、3,000/μL以下あるいは10,000/μL以上の場合は異常である。小児は数が多く、新生児で17,000/μLくらい、幼児で13,000/μLくらいある。
白血球も骨髄の幹細胞からつくられる。顆粒球、単球、リンパ球の未熟な細胞を、それぞれ骨髄球、単芽球、リンパ芽球という。骨髄球のさらに未熟な段階を骨髄芽球という。
白血球の機能
好中球は、マクロファージ(大食細胞)とともに体内に侵入した細菌を攻撃し貪食する。これを食作用 phagocytosis という。好中球は変形しながら、血管壁を自由に通過できる。これを血管外遊走 diapedesis という。
好中球やマクロファージは、特定の化学物質に対し化学走性 chemo taxis を示し、近寄ったり逃げたりする。好中球は酵素を分泌して血管壁の一部を溶かし、再び修復する機能をもっている。このため、感染源のあるところはどこでも到達できる。 好酸球と好塩基球はアレルギー反応に関与している。好塩基球はアレルギーを起こし、好酸球はアレルギーを抑えるとみられている。
単球は白血球の約5%を占め、好中球に次いで活発な貪食作用をもつ。単球が血管外に出ると組織マクロファージとなる。細菌や不用になった細胞を貪食する。このため、大食細胞ともいう。
リンパ球は免疫反応において中心的役割を担っている。リンパ球にはB細胞とT細胞がある。B細胞は赤色骨髄で産生される。T細胞の未熟な細胞は赤色骨髄で産生されるが、未熟なままで血液中に放出され、胸腺やリンパ組織に行き、そこで成熟して再び血液中に放出される。
顆粒球の寿命は3~15日で、赤血球より短い。ほかの白血球については、はっきりしていない。
サイトカイン
生体の細胞間では、さまざまな情報交換が行われているが、特に免疫系、造血系の細胞間で情報伝達を担う一群の液性因子をサイトカイン cytokine とよび、可溶性タンパク質である。サイトカインは主としてリンパ球やマクロファージから放出される。
特にリンパ球などの免疫を担う細胞から放出されるものをインターロイキン interleukin という(このほかのサイトカインには、コロニー刺激因子やインターフェロンなどがある)。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版