マクロファージとは・・・
マクロファージ(まくろふぁーじ)は、血液中に存在する白血球のうち5%程度を占める単球の一種である。単球は、血中に10~20時間存在したのち、血管内から組織へ遊出する。組織に入って5倍もの大きさにまで膨らんだ単球がマクロファージと呼ばれる。マクロファージは、さまざまな組織に存在し、特に皮膚に存在するものは組織球、肝臓に存在するものはクッパー細胞、脳に存在するものはグリア細胞、肺に存在するものは肺胞マクロファージと呼ばれている。
免疫には、自然免疫(最初に起動される非特異的な生体の防御反応)と獲得免疫(個々の異物に対する特異的な免疫)があるが、マクロファージは、好中球とともに特に自然免疫において需要な役割を果たす。自然免疫は、生体に侵入した細菌やウイルスなど異物に対する最初の防御反応であり、好中球とマクロファージが異物を貪食する。マクロファージは、好中球よりもはるかに強力な貪食能をもち、大量の細菌や大きなサイズの異物(壊死組織など)を貪食することができる。マクロファージ内には、タンパク分解酵素やリパーゼで満たされたリソソームが存在し、貪食された異物を含んだ小胞がリソソームと融合して、異物が消化され残渣が放出される。リソソーム内の酵素で消化できない場合も、スーパーオキサイド、過酸化水素などのマクロファージ内の殺菌物質によって殺菌される。マクロファージは最終的に死滅するまで何か月も貪食能を発揮する。
マクロファージは、貪食した異物を細胞表面に提示(抗原提示)することによりヘルパーT細胞を活性化し、獲得免疫にも関わる。さまざまな細胞増殖因子や炎症性サイトカインの産生能ももち免疫機構、骨髄での単球顆粒球産生機構を制御している。
しかし、マクロファージによる貪食殺菌作用は万能ではない。結核菌など一部の細菌は殺菌作用を阻害する物質を分泌する能力を持つため、慢性感染が成立する。また、ヒト免疫不全ウイルスは、ヘルパーT細胞とマクロファージそのものに入り込み、細胞間の物質交換作用を利用して細胞外に出ることなく増殖することで、免疫による除去を回避するとともに、これらの細胞の機能不全を起こすことが知られている。