生体防御のしくみ|非特異的防御機構と特異的防御機構
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、生体防御のしくみについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
免疫
人体は、自分自身の細胞や組織以外のものを排除し、生体に危害を加えるものから防御する能力をもつ。この能力を免疫という。このような免疫を担う細胞には、好中球、単球(マクロファージ)、リンパ球などがある。
防御機構は、非特異的防御機構と特異的防御機構に大別できる。非特異的防御機構は、細菌や異物などを無差別に排除する機構で、異物侵入の初期に働く。
もう1つの特異的防御機構は、一度感染したら、同じ病原体には再び感染しないように働く機構で、侵入した病原体を認識して特異的に処理する。
非特異的防御機構
非特異的防御機構に重要な役割を果たすのは、好中球、単球(マクロファージ)である。好中球は、細菌やウイルスに対する貪食作用がある。血液中に大量に存在し、血管外に出て細菌のいる場所に進んでいく(遊走)。
いったん血管外に出ていった好中球は、血管内に戻ってこない。膿は、細菌を貪食した白血球の残骸である。単球は、好中球より遅れて感染局所にかけつける。単球が血管外に出て各組織でマクロファージになる。
マクロファージは好中球よりもさらに強い貪食能をもっており、細菌ばかりでなく不要になったり病気になった細胞を貪食する。このように大食い細胞なので大食細胞ともよばれる。マクロファージは各組織に存在する。
特異的防御機構
リンパ球がこの機構の中心的役割を果たす。免疫機構には異物の攻撃、排除にあたる細胞性免疫(Tリンパ球が担う)と、抗体を産生して抗原を攻撃する液性免疫(Bリンパ球が担う)に大別されるが、この両者の共同作用によって生体を防御している。
Tリンパ球(T細胞)の働き
T細胞は、免疫系全体の司令塔的な重要な役割を果たしている。T細胞は、マクロファージが貪食した異物(抗原)の特徴を認識すると、感作リンパ球となってリンフォカイン(サイトカインの一種)を産生する。
またヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞ともいう)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などそれぞれの役割をもったいくつかの細胞に分かれる。ヘルパーT細胞は、B細胞が形質細胞へ分化するのを促進し、免疫に関与する細胞を活性化させる。
サプレッサーT細胞は、主としてヘルパーT細胞を抑制して抗体をつくりすぎたりしないよう抑制をかけるネガティブフィードバック機能を果たしている。細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)は攻撃性細胞ともよばれ、細菌やがん細胞、移植された細胞等に打撃を与える。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、ヒト血液中のリンパ球の2~10%を占め、ウイルス感染した細胞や腫瘍細胞を破壊する。ナチュラルキラー細胞の活性はストレスや加齢によって低下する。このため歳をとるとがんの発生率が高くなるとされる。
Bリンパ球(B細胞)の働き
B細胞の主な働きは、T細胞の指令により特定の抗体を産生することである。抗体は、免疫グロブリン( immunoglobulin : Ig )とよばれるタンパク質で、5種類(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)ある。抗体が抗原(細菌やウイルス等)と結合して抗原を攻撃する。免疫グロブリンは、構造の類似した一群のタンパク質である。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版