生理的変化
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は新生児の生理的変化について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
生理的変化
新生児は、胎内生活から母体外生活へ適応していく経過の中で、大きな生理機能の変化をとげている。
1排尿
出生後の初回排尿は、97%の新生児で生後24時間以内にみられる。
尿量
1.5~3.0mL/kg/時
尿比重
1.008~1.015
尿酸塩尿
臍帯血の血清の尿酸濃度は、母体血よりも高い。また、腎上皮組織の透過性が大きいために、出生後には、おむつにレンガ色の赤いしみがみられることがある(図1)。
生後6日目以降は、尿中尿酸濃度は低下するため、次第に認めなくなる。
2排便
胎便
出生直後の胎便は、粘性の緑色便であり、胃腸分泌物・胆汁(たんじゅう)・膵液(すいえき)・血液・産毛・胎脂(たいし)を含み、水分は約75%程度である(図2)。
約90%の新生児が、生後24時間以内に初回の胎便を排泄する。
移行便
緑褐色で、生後3~4日頃にみられる便(図3)。
普通便
黄色で、泥状の便(図4)。
3溢乳(いつにゅう)
溢乳とは、母乳やミルクを哺乳した後、しばらくして口元からタラタラと少し流れるように出ること(図5)。
目次に戻る
皮膚の変化
成熟した新生児の皮膚は、皮下脂肪が厚く、産毛は少なく、爪は指の先端まで伸びている。出生第1日目は、赤くみずみずしい感じがするが、その後は乾燥して、薄皮が細かく剥(む)ける。新生児期には、病的とはいえない皮疹がみられることがある。
落屑(らくせつ)
落屑は新生児の90%前後にみられ、生後2日目頃より皮膚が剥けてきて、1週間程度で消退する(図6)。
胎脂
胎児の皮膚からの剥脱上皮と皮脂腺からの分泌物とが混合したもので、胎児の皮膚に付着している(図7)。
中毒性紅斑(こうはん)
成熟児の約半数にみられる正常な紅斑であり、中央に黄色の丘疹(きゅうしん)があり、周囲に紅斑があるのが特徴的である(図8)。
生後2~4日頃に多くみられる。原因不明の一過性の反応で、胸・腹・背中に多くみられ、放置しても2~3日で自然に消失する。
鼻皮脂
児が成熟して出生した徴候を示すものであり、鼻の上に白色~黄色いつぶつぶを認める(図9)。
脂漏(しろう)性湿疹
母親のホルモンの影響により、皮脂腺が刺激を受け、分泌過多となり、頭・額(ひたい)・頬に生じる黄白色の丘疹である(図10)。
単純性血管腫
血管拡張型母斑であり、皮膚表面の盛り上がりがなく、平らで皮膚との境目が鮮明である赤い母斑である(図11)。身体のどの部位にもみられる。自然消退はみられないことが多い。
イチゴ状血管腫
生後数週間から数か月で盛り上がる、毛細血管性の血管腫であり、多くは、身体のどの部分にも生じる(図12)。
特別な治療をする必要はなく、生後1年ほどで消失することが多い。
サーモンパッチ
血管が拡張するための紅斑の一種で、眼瞼(がんけん)にできるものをいう(図13)。原因は不明であるが、病的意義はない。生後1~2年で消失する。
おむつ皮膚炎
頻回な尿や便の排泄、おむつ交換のときの清拭、洗剤が刺激となり、肛門周囲にみられる発赤の炎症症状である(図14)。
新生児脂漏性湿疹
生後2週間から2か月の間に、新生児の顔面や頭皮といった皮脂腺に多い場所に生じる湿疹。頭皮や眉毛に黄白色の厚いかさぶたが生じるのが特徴である(図15)。
これは、母親由来の性ホルモンの影響で、生理的に皮脂の分泌が亢進することが原因である。ケアとして大切なのは、かさぶたをオリーブ油でなじませてふやかし、石けんでよく洗うようにする。
目次に戻る
ホルモンと生理的変化
新生児月経・帯下
妊娠中の母親からのエストロゲンの消退性出血である。
そのまま様子をみていれば自然に消失する。女児にのみ観察される(図16、図17)。
乳房腫脹
妊娠中に母親から胎盤を通じて移行したエストロゲンの作用によって生じ、男女問わずみられる生理的変化である(図18)。2~3か月で自然に寛解する。
毛巣洞
肛門の上部の仙骨部位に小瘻孔として認められ、まわりの皮膚よりも多毛であることから気づくことが多い(図19)。骨髄とつながっている場合には治療を要するが、浅い盲端であれば清潔に心がけていればよい。
鵞口瘡(がこうそう)
母親にカンジダ腟炎があり、治癒していないで経腟分娩したケースの新生児にみられる(図20)。抗真菌薬の外用の治療で治る。乳汁やミルク残渣と間違えやすいため、口腔内清拭をして観察をすることがよい。
目次に戻る
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版