新生児訪問
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は新生児訪問について解説します。
高木由美
滋賀医科大学看護学専攻大学院生
新生児訪問指導と乳児家庭全戸訪問事業
昨今では、母子の健康のために、産後事業が強化されてきている。
新生児訪問指導
母子保健法第11条に定められた事業であり、市区町村によって実施される。新生児の保護者に、育児上必要があると認めるときは、医師、保健師、助産師または栄養士などの専門職が保護者を訪問して、必要な指導を行うものである。
・訪問の時期:新生児が生後28日以内に行う。里帰り出産でその期間内に住所地に住んでいない場合は、60日以内に訪問を行う。
・訪問の目的:新生児の発育・発達の確認、母親の産後の体調の確認、母乳栄養についての相談、栄養・生活環境・疾病予防、育児相談(不安や悩みについて)
・訪問の回数:基本的には、1回限りの訪問である。自治体が必要と判断する場合や母親が希望する場合は、訪問を受けることが可能である。
低出生体重児の届出と未熟児訪問
出生体重2500g未満の乳児の出生時、保護者は市区町村に届け出る義務がある(母子保健法第18条)。また、妊娠37週未満または出生体重2500g未満の未熟児の場合、保健師、助産師、栄養士、保育士などが訪問して、育児相談、健康相談などを行う(母子保健法第19条)。
子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)
妊娠出産包括支援事業として、平成29年から施行された。市区町村に設置され(平成29年、525市区町村1,106か所)、妊娠期から子育て期にわたるまでの支援をワンストップで切れ目のない支援を行う(母子保健法第22条)。2020年度末までに全国展開される計画。
乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)
児童福祉法第6条の3第4項に定められた事業であり、市区町村によって実施される。乳児家庭の孤立化を防ぎ、乳児の健全な育成環境の確保をはかるものである。
・訪問の対象者:生後4か月を迎える日までの赤ちゃんがいるすべての家庭である。
・訪問の目的:
①育児に関する不安や悩みの傾聴、相談
②子育て支援に関する情報提供
③乳児及びその保護者の心身の様子及び養育環境の把握
④ 支援が必要な家庭に対する提供サービスの検討、関係機関との連絡調整
養育支援訪問事業
生後4か月以降の訪問が必要な場合は、市区町村より継続的に訪問支援がされている。育児ストレス、産後うつ病、育児ノイローゼなどの問題によって、子育てに不安や孤立感などを抱える家庭や、さまざまな原因で養育支援が必要な家庭に対して、育児・家事の支援または保健師などによる養育に関する指導助言などを訪問により実施される。
子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポートセンター事業)
乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かりの援助の希望者(預ける側)と援助する者(預かる側)との相互援助活動に関して連絡、調整を行うもの。
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新生児訪問の意義
育児に関する不安や悩みを聞き、子育て支援に関する必要な情報を提供することにより、子育てによる母親の孤立化を予防し、親子の健やかな成長・発達につながる。
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訪問までの手順
・保健センター(市区町村)は、新生児期に1回は新生児訪問を実施している。
・里帰り分娩の場合は、里帰りから帰宅後に連絡をして、訪問を実施する。
・母親から希望があれば、1回以上訪問を実施する。
・病院・施設からの依頼により、市町村は訪問を実施する。
・保健センター(市区町村)の多くは、委託助産師に新生児訪問を依頼している。
1保健センターから、担当の委託助産師に依頼がある
・対象者の基本情報の提供
2訪問日時予約のために電話をし、日程の調整を行う
・委託助産師の自己紹介
・新生児訪問の制度についての確認、訪問の同意を得る
・相談を受ける
・当日準備してほしいものを伝える
・当日都合が悪くなった場合の連絡先を伝える
3訪問のための準備を行う
・服装や身だしなみを整える
・ 必要物品(図1)を準備する(エプロン、手指消毒剤、体温計、身長計、メジャー、ペンライト、汚物入れ、メモ・筆記用具、記録用紙、市町村で配布されている冊子やリーフレット、新生児訪問指導員証等身分証明となるもの、電子計算機など)
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訪問の実際
1自己紹介・挨拶後に入室する。
2家族や環境の観察を行う。
4母親(対象者)の観察、必要事項の問診を行う(表2参照)。
5新生児と母親の状態のアセスメントを母親に話す。
6育児に関する不安や悩みなどに応える。
7乳児健康診査、予防接種などの説明をする(表3、表4参照)。
8訪問終了の確認をし、退室する。
9訪問後地域の保健師に報告し、必要があると判断した場合は保健師に継続フォローを依頼する。
<保健師が継続フォローする例>
・児の体重増加不良、疾患の可能性がある場合
・児への虐待、育児放棄などが疑われる場合
・母親の疲労、不眠、産後うつなどがみられる場合
・乳房トラブルが生じている場合
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引用・参考文献
1)厚生労働省: 子ども・子育て支援、2019年12月27日検索
2)厚生労働省:母子保健法、2019年12月27日検索
3)厚生労働省: 産後ケア事業ガイドライン2017、2019年12月27日検索
4)NIID(国立感染症研究所):定期/任意予防接種スケジュール2018、2019年12月27日検索
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版