聴力検査

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は聴力検査について解説します。

 

中井抄子
滋賀医科大学医学部看護学科助教

 

 

新生児聴覚スクリーニング検査

新生児聴覚スクリーニング検査は10分程度で終了する簡易検査であり、専門施設にて精密検査を受けるべきかを選別するために行う。

 

先天性難聴の出現頻度は1000人に1~2人とされており、他の先天性疾患に比べても頻度が高く、その早期発見・早期治療が聴覚障害による音声言語発達を大きく左右することから、重要な検査である。

 

新生児聴覚検査の実施状況

新生児聴覚検査の実施を義務づけている国がある一方で、日本ではまだ全新生児への実施は義務づけされてはいない。新生児聴覚検査の実施に向けた取組みの促進が行われている。

 

 

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検査方法

検査方法には、聴性脳幹反応(auditory brainstem response:ABR)耳音響放射(otoacoustic emission:OAE)がある。

 

検査時期

入院中もしくは1か月健診時に行われる。生後3日以内に初回検査を行い、パス(反応あり)しなかった場合は退院までに再検査が行われる。

 

検査のタイミング

体動によるノイズを避けるため、授乳後1時間程度のタイミングが適している。自動ABR は入眠時が望ましいが、自動音響放射検査(自動OAE)は啼泣せず静かな状態であれば検査可能である。

 

聴性脳幹反応(ABR)

電極を3か所(前額部中央、項部中央、肩または頬部)に貼付し、両耳にイヤカップラー(使い捨てイヤホン)を装着する(図1)。

 

図1 聴性脳幹反応(ABR)の様子

聴性脳幹反応(ABR)の様子

 

ささやき声程度の強さの音をイヤホンから聞かせ、結果は「パス(pass)」あるいは「リファー(再検査、refer)」と表示される1)図2)。

 

図2 聴力検査結果

聴力検査結果

 

1電極の接触抵抗を下げるために、装着する部位の皮膚を清拭する。

2電極を3か所に貼り付ける。

3イヤホンを装着する(右耳は赤、左耳は青)。

4結果を確認し、イヤホンと電極を除去する。

 

耳音響放射(OAE)法

イヤープローブ(外耳道に挿入する部分)から出された音に対して内耳の蝸牛が反応し、一部外耳道に放射される音を検知して、「パス(pass)」あるいは「リファー(refer)」と表示される1)

 

1機器の動作のチェックを行う。

2耳介を優しく後ろに引っ張り、外耳道を広げ、耳垢や胎脂などを綿棒で取り除く。

3イヤープローブを外耳道に沿って挿入する。

4結果を確認し、イヤープローブを除去する。

 

 

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引用・参考文献

1)日本耳鼻咽喉科学会:新生児聴覚スクリーニングマニュアル ―産科・小児科・耳鼻咽喉科医師、助産師・看護師の皆様へ―、2016、より2018年12月21日検索
2)仁志田博司:新生児学入門、第5版、p74~75、医学書院、2018

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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