糖尿病はどうして起きるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「糖尿病」に関するQ&Aです。
[前回]
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
糖尿病はどうして起きるの?
糖尿病(diabetes mellitus ; DM)は糖代謝、脂質代謝にかかわるインスリンの作用不足によって起きる疾患で、1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のβ(B)細胞が自己免疫などにより破壊され、インスリンが欠乏することによって起きます。インスリン注射が必須です。
2型糖尿病は、遺伝的素因に肥満、運動不足などの環境因子が加わって発症します。2型糖尿病には2つの型があり、どちらもインスリンの分泌は行われます。そのうちの1つは、インスリンの分泌が低下する場合と、もう1つはインスリン抵抗性(インスリンの分泌があるにもかかわらず効きが悪くなっている状態)の場合があります。
2型糖尿病はインスリン分泌を刺激する薬などが使用されますが、インスリン投与が必須になることがあります。また、2型糖尿病には食事療法や運動療法が有効です。
MEMO低血糖(ていけっとう)
血液中のグルコースが少なくなりすぎた状態。通常血糖値60mg/dL 以下の場合を低血糖症といいます。60mg/dLで生理的飢餓感を覚え、45mg/dL以下になると、激しい飢餓感からショック状態となり、脱力、冷汗、振戦などが現れます。
COLUMN高血糖(こうけっとう)
空腹時血糖値が126mg/dL以上で、かつ糖化ヘモグロビ(HbA1c)が6.5%以上の場合を糖尿病といいます。糖尿病では以下のような障害が生じます。
・血液中のグルコースがLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と結合すると、血管壁にコレステロール が沈着し、動脈硬化を引き起こします。
・血液中のグルコースがHDLコレステロール(善玉コレステロール)と結合すると、余分なLDLコレステロールの回収というHDLコレステロールの能力が低下し、動脈硬化が促進されます。
・インスリンの血中濃度が高くなると、排泄されるはずのナトリウムが腎臓で再吸収され、循環血液量が増えて血圧が上昇します。これによってさらに動脈硬化が促進されます。
・インスリンは交感神経に作用して血管を収縮させ、血圧を上昇させます。また心臓の負担を大きくし、心不全や心肥大が起こりやすくなります。
・赤血球のヘモグロビンがグルコースによって糖化すると(糖化ヘモグロビン、HbA1c)、赤血球の酸素運搬能力が低下し、細胞が酸素不足に陥ります。
・腎臓の再吸収能力の限界を超えるほどの高血糖状態になると、尿中にグルコースが漏れ出てきます(尿糖)。また、グルコースのために尿の浸透圧が高くなるので、尿量や排尿回数が増えます。
・エネルギー源であるグルコースを効率よく使えないため、倦怠感、疲労感などがみられるようになり、最終的にはやせていきます。
・高血糖によって眼、神経、腎臓の細い血管が障害され、網膜症、神経障害、腎症という糖尿病の3大合併症を起こします。
※編集部注※
当記事は、2017年3月2日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版