頭痛に関するQ&A

 

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

 

今回は「頭痛」に関するQ&Aです。

 

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

頭痛の患者からの訴え

  • ・「頭が痛いです」

 

頭痛に関連する症状〉

頭痛に関連する症状

 

〈目次〉

 

頭痛って何ですか?

頭痛とは、首から上、つまり頭部に感じる痛みを指します。ズキズキ、ガンガン、ズシーンなど頭の痛みを表す言い方はいろいろです。

 

ただし、にきびや傷などの表面上の痛みやの痛みは頭痛とはいいません。

 

どのようにして痛みを感じる?

そのものは痛みを感じません。

 

たとえば、指先に針を刺すと「痛い!」と感じますね。これは、皮膚に痛みを感じる受容体があり、そこで受けた刺激が知覚神経を通じて脳に伝わり、「痛み」という感覚として認識されているからです。

 

脳の神経組織自体には痛み刺激に対する受容体はなく、痛みを感じる受容体があるのは、血管と脳を取り巻く硬膜(こうまく)やクモ膜、頭にある筋肉、頭蓋骨を覆う骨膜などです。これらが刺激を受けると、痛みを感知して頭痛が生じるのです。

 

頭痛の種類は?

大きく分けると、脳に何らかの病気があって起きる頭痛と、そうでないものに分類されます。

 

脳の病気からくるものとしては、脳腫瘍や脳出血、クモ膜下出血、髄膜炎に伴う頭痛があります。これらは、生命に重大な危険をもたらします。

 

一方、脳の病気がなく、危険性が低い頭痛としては、「頭がズキズキする」といった片頭痛や、「肩が凝って頭が重い」といった緊張型の頭痛があります。

 

脳腫瘍や脳出血で頭痛が起こるメカニズムは?

脳腫瘍や脳出血で痛みが生じるのは、腫瘍や出血した血液の塊である血腫が脳の血管を圧迫するために、血管の位置がずれたり、引っ張られたりするからです。すると、血管の受容体が刺激され、痛みが発生します(図1)。

 

また、脳はかたい頭蓋骨に囲まれた、かぎられたスペースのなかに位置しています。内部に腫瘍や血種ができることで頭蓋内圧が上がり、脳の中の血管や硬膜が引っ張られて血管の受容体が刺激され、痛みが起きるのです。

 

図1脳腫瘍などで起きる頭痛のメカニズム

脳腫瘍などで起きる頭痛のメカニズム

 

クモ膜下出血や髄膜炎で頭が痛くなるのはどうして?

クモ膜下出血の原因の多くは、脳底部の動脈にできた動脈瘤が破れたものです。出血した血液は、脳と脊髄全体を覆うクモ膜下腔に充満し、その結果硬膜が引っ張られて激しい頭痛が起きます。

 

髄膜炎では、血液を介してクモ膜下腔に細菌が侵入し、それをやっつけるために白血球が集まってきます。その結果、クモ膜下腔に膿が溜まって硬膜が刺激され、頭痛が発生します。

 

クモ膜下出血や髄膜炎のようにクモ膜下腔への血液の貯留や炎症によって髄膜が刺激されて起こる症状を髄膜刺激症状(「意識障害」参照)といいます(図2)。

 

図2クモ膜下出血で起きる頭痛のメカニズム

クモ膜下出血で起きる頭痛のメカニズム

 

COLUMN 脳動脈瘤の塞栓術

現在は、脳ドッグで、クモ膜下出血の原因になる脳底部の動脈瘤の有無をあらかじめ知ることができるようになりました。動脈瘤の塞栓術は、脚の血管から動脈瘤までカテーテルを挿入し、その中にやわらかいコイルのようなもので人工的に塞栓をつくることにより、動脈瘤の破裂を予防しようとする手術です。

 

動脈瘤の根元をクリップで止めるクリッピング手術と異なり、開頭する必要がないので、患者への負担が軽くてすみますが、動脈瘤の形によっては効果が期待できなかったり、誤って血管を破ったり、血栓ができて脳梗塞を起こしてしまう場合もあります。また、動脈硬化の強い人では、動脈瘤までカテーテルを誘導しにくいといった欠点もあります。

 

脳動脈瘤を治療するのかどうかは、動脈瘤の大きさや形状、年齢、健康状態などを考慮したうえで判断します。

 

目や耳の病気と頭痛の関係は?

緑内障によって眼圧が高まると、強い頭痛が発生します。中耳炎などの耳の病気からくる頭痛もあります。

 

「脳に病気がないのに頭が痛い」と感じるメカニズムは?

片頭痛を例にとって説明しましょう。

 

片頭痛というのは表1に示すように、脳の片側が痛む、ズキズキと痛む拍動性など、基準で定められた性質をもつ頭痛が一定時間続くもので、神経疾患と考えられています。片頭痛の原因はよくわかっていませんが、1つの説としてセロトニンによる血管の拍動が関係しているという考えがあります。

 

表1前兆のない片頭痛(migraine without aura)の診断基準

片頭痛のメカニズム

 

まずは、図3を見てください。何らかの原因で血管が過度に拡張すると、血管の外側にある痛みを感じる受容体が刺激されます。その結果、痛みを感じる知覚神経が脳に信号を伝え、痛みが起こります。

 

図3片頭痛のメカニズム

 

神経伝達物質であるセロトニンには血管を収縮させる働きがあり、セロトニンにより一旦収縮した血管が拡張するときに片頭痛が発生すると推測されています。

 

片頭痛による痛みは血管が拡張するときに強まるため、片頭痛は「ズキズキ」という間欠的な痛みとして表現されます。また、最近は、血管に分布して痛みを伝える三叉神経の信号を受ける三叉神経を中心に神経細胞が敏感になり、三叉神経からの信号をより強く感じるため痛みが強く起こるという説も提唱されています。

 

肩が凝ると頭が痛いのはどうして?

ストレスが溜まると、気がつかないうちに顔もしかめっ面になってくることがありますね。

 

このような状態では、顔面の筋肉の緊張が続きます。また、読書、手芸、執筆、あるいはパソコンなどの仕事を長時間続けた場合も、同じように頭部、頸部、肩甲部の筋肉の緊張が続くことになります。

 

このような筋肉の緊張が続くことによって生じる頭痛を、「緊張型頭痛」とよびます。その機序についてはまだよくわかっていませんが、筋肉の緊張がとれれば解消することができます。

 

頭痛の観察のポイントは?

まずは頭痛の発症の仕方や程度から頭痛の背後に重大な病気があるかどうか、病気によるものなら緊急の対応を要するものかどうかを見極めることがとても大切です。

 

たとえば、脳出血やクモ膜下出血からきているときには手術も含め、一刻も早い処置が必要です。CTやMRIなど検査の手配から手術の準備まで、すばやい対応が求められます。

 

いきなり痛みだしたのか、慢性的な痛みか我慢できる痛みかなど、頭痛の「起こり方」と「強さ」を観察します。また、一過性のものなのか、痛みが続いているのか、痛みが増しているのかといった「経過」も大切です。

 

痛みが増強している場合は、出血部位が広がって頭蓋内圧が亢進している可能性があります。悪心・嘔吐(「悪心・嘔吐」参照)、発熱、流涙、痺れ、めまいなどの「随伴症状」についても問診します。

 

クモ膜下出血や髄膜炎では、髄膜刺激症状(「意識障害」参照)がみられます。

 

さらにクモ膜下出血であれば「体験したことのない激痛がいきなり現れる」、髄膜炎では発熱や嘔吐を伴う」というように、原因によって頭痛のタイプや随伴症状が異なります。疾患別の頭痛の特徴をきちんと把握しておきましょう。

 

幼児は「頭が痛い」と訴えることができず、機嫌が悪くなったり、「おなかが痛い」と言うことがあります。本当に痛いのはどこか、実際に指で示すなどして確認しましょう。

 

また、薬剤のなかには副作用として頭痛をきたすものもありますので、服用している薬についてもチェックしましょう。

 

頭痛を緩和するケアは?

まずは安静です。楽な姿勢で臥床し、休息が取れるように、刺激の少ない落ち着いた環境を整えます。緊急度の高い頭痛ではなく、痛みが強くて睡眠が妨げられるような場合は、鎮痛薬が処方され、その与薬管理を行います。

 

片頭痛や緊張型頭痛は、精神心理的ストレスや身体的ストレスとの関係が強いと考えられています。これらを解消するためには、患者に合ったリラクゼーションも効果的です。必要に応じてマッサージやアロマテラピーを試みるのもいいでしょう。片頭痛の場合は、冷やすことで痛みが和らぐこともあります。

 

また、精神的イライラや緊張は、頭痛を誘発・増悪させやすいので、ドアの開閉音や足音、話し声、消毒薬や花の強い香りなどの刺激を避けるよう、環境調整も大切です。

 

※編集部注※

当記事は、2016年12月11日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック 第2版』 (監修)岡田忍/2024年7月刊行/ サイオ出版

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