失禁の機序|失禁の種類と原因
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「失禁」に関するQ&Aです。
[前回]
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
失禁の機序
尿を膀胱内にためておくことができず、不随意に出ることを失禁といいます。失禁は尿が充満したときの膀胱内圧と尿道内圧のバランスが崩れることによって生じます。
失禁には、①切迫性尿失禁、②反射性尿失禁、③腹圧性尿失禁、④溢流性尿失禁、⑤完全尿失禁などがあります。
①切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)
脳梗塞や脳出血などによって大脳の排尿中枢が障害され、排尿の抑制ができなくなる運動切迫性尿失禁と、膀胱炎や尿道炎、膀胱結石などによって下部の尿路に障害が生じ、排尿の抑制ができなくなる感覚切迫性尿失禁があります。
②反射性尿失禁(はんしゃせいにょうしっきん)
脊髄の障害によって起こります。膀胱が全く抑制されずに収縮し、尿道に不随意な弛緩が起こるため、膀胱に尿がたまると反射的に排尿が起きてしまいます。脊髄損傷や脳腫瘍、脊髄腫瘍などで発生します。
③腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)
咳やくしゃみ、荷物の持ち上げ動作、笑いなどに伴って失禁が生じます。骨盤底筋群が弱くなり、膀胱の頸部や近位尿道の緊張性が低下することによって起こります。出産後、中高年の女性などに多くみられます。
④溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)
尿道の閉鎖、膀胱の収縮力低下などで残尿が生じ、膀胱壁が伸びきった状態になると、膀胱内の残尿が漏れ出します。これが溢流性尿失禁です。前立腺肥大、直腸癌、子宮癌の手術後などに起こることがあります。
⑤完全尿失禁(かんぜんにょうしっきん)
先天性異常や外傷などによって尿道が機能不全になった場合に起こります。膀胱内に尿をためておくことができず、尿が常に漏れ出ます。前立腺手術後の合併症として起こることがあります。
※編集部注※
当記事は、2016年12月19日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版