血漿Ca2+調節ホルモン
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、血漿Ca2+調節ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
1. 血漿 Ca2+濃度の基準値は、約10mg/dL(5mEg/L)である。2. 血漿 Ca2+濃度を増加させるホルモンは、パラソルモン(PTH)と活性型ビタミンD3である。
3. 血漿 Ca2+濃度を低下させるホルモンは、カルシトニンである。
活性型ビタミンD3の活性化
皮膚に蓄えられている7 - デヒドロコレステロール(7 - dehydrocholesterol〔プロビタミンD3〕)は、紫外線の働きでビタミンD3(コレカルシフェロール 〔cholecalciferol〕)に変化する。このビタミンD3が肝臓で25位が水酸化され、さらに腎臓で1位が水酸化されて、活性型ビタミンD3(1,25 - dihydroxycholecalciferol)になってはじめて生理作用を発揮する。
したがって、日光が当たらない生活をしたり、肝、腎疾患があると、活性型ビタミンD3が体内でつくられず、経口摂取が必要になる。慢性腎臓病(CKD)による慢性腎不全ではビタミンD3の活性化が障がいされて、小腸でのカルシウムやリンの吸収が低下する。
その結果、低カルシウム血症や低リン血症になる。低リン血症では、骨や軟骨の石灰化が障がいされ、骨成長後の成人では「骨軟化症(osteomalacia)」を、骨成長期の小児では「くる病(rickets)」を発症する。骨軟化症では、股関節などに骨痛が起こる。乳児のビタミンD欠乏性くる病は、母乳栄養で、日光に当たることを極端に避けた児に起こりやすい。
血漿Ca2+濃度の基準値は、約10mg/dLで、表1の3つのホルモンで調節されている(図1)。
表1血漿Ca2+調節に関与するホルモン
図1血漿Ca2+濃度の調節
NursingEye
生体内のCaの99%以上は骨に含まれる。PTHの作用による骨からのCa2+溶解は、従来、骨吸収とよばれている。これは(bone resorption)の和訳であるが、骨吸収という言葉はCa2+溶解ではなく、逆にCa2+が骨に吸収されると誤解されやすい。骨吸収でなく、骨溶解とよぶほうが実態をよく表している。
血漿Ca2+濃度が低下するとテタニー(tetany)が起こる。テタニーは、主に四肢遠位筋での強い攣縮が特徴で、助産婦手位(obstetrical hand、母指球と小指球が接近する)がみられる。
※編集部注※
当記事は、2017年4月7日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版