内分泌様器官|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、内分泌様器官について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 内分泌専用の臓器・組織ではないがホルモンを分泌する内分泌様器官がある。
- 2. 腎臓は、エリスロポエチン、レニン、活性型ビタミンD3を分泌する。
- 3. 心臓は、ANPを分泌する。
- 4. 消化管は、ガストリン、セクレチン、CCK-PZなどを分泌する。
- 5. 胎盤は、hCGを分泌する。
- 6. 脂肪組織は、レプチンを分泌する。
- 7. 肺がんの腫瘍組織は、ACTHを分泌する。
- 8. 膵臓がんの腫瘍組織は、ガストリンを分泌する(ガストリノーマ)。
- 9. 小さな脂肪組織から分泌されるアディポネクチンはインスリン抵抗性を改善する(「NursingEye」参照)
内分泌様器官の分類
腎臓(kidney)、心臓(heart)、消化管(digestive tract)、胎盤(placenta)、脂肪組織(adipose tissue)、腫瘍組織(tumor tissue)などは、内分泌専用の臓器・器官ではないが、表1のようなホルモンを分泌している。
表1内分泌様器官
ギリシャ語で erythrは赤血球、poiesは形成の意味があるのでエリスロポエチン(erythropoiechin)は、赤血球の産生を促進させる物質ということになる。レニン(renin)のrenは、ラテン語で腎臓を意味する。レプチン(leptin)のleptには、ギリシャ語で和らげるあるいはやせるという意味があり、inは促進させる物質という意味である。
レプチン
脂肪組織はレプチン(leptin)というホルモンも分泌する。レプチンはアミノ酸186個からなるタンパク質で①摂食抑制、②エネルギー消費(熱産生)、③血糖低下作用などがある。
脂肪細胞が肥大するとレプチンが分泌され、視床下部(hypothalamus)にある摂食中枢(feeding center)に作用し、食欲を抑制するとともに褐色脂肪組織(BAT)に作用し、エネルギー代謝の増大を促す(表2)。
表2脂肪組織が産生するホルモン様物質の作用
また、脂肪組織に血糖を取り込み、脂肪合成を促進させる結果、血糖を低下させるというインスリン様作用も示す。肥満者では、視床下部のレプチン受容体の異常、また、レプチンそのものが異常でレプチンが増加しても摂食抑制がなく(レプチン抵抗性)、肥満になっていくと考えられる。
神経内分泌腫瘍〔neuroendocrine neoplasm〕
表1の異所性ACTH症候群やゾリンジャーエリソン症候群のように腫瘍組織がホルモンを分泌することがあり、そのような腫瘍を神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm)という。これらの腫瘍は消化器(特に膵臓、直腸)、肺、気管支に発生するものが多い。
※編集部注※
当記事は、2017年4月14日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版