血圧調節ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、血圧調節ホルモンについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
血圧調節ホルモン
ホルモンによる血圧調節(血圧の液性調節)を整理すると表1のようになる。
昇圧系ホルモン
アンジオテンシンⅡ、ブラジキニンなどは血中で変換されて産生される生理活性物質であるが、広い意味でホルモンと考えられる。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は、代表的な昇圧系である(図1)。
レニンは、血漿タンパク質のα2-グロブリン分画に属するアンジオテンシノーゲンを分解するタンパク分解酵素である。アンジオテンシノーゲン angiotenshinogen の分解でできるアンジオテンシンⅠには特に生理作用はないが、アンジオテンシン変換酵素 angiotensin converting enzyme (ACE)によりアンジオテンシンⅡになると強力な血圧上昇作用を示す。
ACEは主に肺毛細血管内皮細胞に存在し、アンジオテンシンⅠが肺毛細血管を通過する1秒足らずの間にアンジオテンシンⅡに変換させる。ACEは、降圧物質のブラジキニン bradykinin を分解する作用ももつ。したがって、ACE阻害薬は昇圧物質アンジオテンシンⅡの産生と降圧物質ブラジキニンの分解の両方を阻害する、二重の意味で有効な降圧薬になる。ACE阻害薬としてカプトプリル captpril などがある。
エストロゲンの降圧作用
エストロゲンは、ブラジキニンと同様に血管内皮細胞で一酸化窒素 nitrogen oxide (NO)を産生させることで血管を拡張させて降圧作用をもたらす。一般に男性よりも女性のほうが高血圧の患者が少ない理由の1つである。
家族性高コレステロール血症 familial hypercholesterolemia のホモ型の患者の場合、血中総コレステロール値が1000mg/dLにも達し、20歳代で心筋梗塞 myocardial infarction になるが、この場合も女性では更年期 climacterium になるまで発症しない(家族性高コレステロール血症参照)。
エストロゲンが動脈硬化 arterioaclerosis を予防していると考えられる。最近は、大豆などに含まれる植物性エストロゲン様物質のイソフラボン isoflavon が注目されている。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版