血球貪食症候群 とは・・・
血球貪食症候群(けっきゅうどんしょくしょうこうぐん、hemophagocytic syndrome;HPS)とは、何らかの原因で骨髄やリンパ節で活性化した組織球やマクロファージが、自己血球を貪食する疾患である。血球貪食性リンパ組織球症、マクロファージ活性化症候群ともいう。
細胞障害性Tリンパ球やナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞障害性顆粒を放出することによりウイルスに感染した細胞を殺す。血球貪食症候群では、この細胞障害経路に異常が生じるためにウイルス感染細胞を十分に排除できず、サイトカインの過剰産生が起こる。この過剰なサイトカインによって活性化された組織球やマクロファージが、血球貪食を来すと考えられている。
遺伝子異常による原発性と、基礎疾患に続発する二次性とがある。原発性は小児に発症するまれな疾患群で、Chediak-Higashi症候群、家族性血球貪食性リンパ組織球症、Griscelli 症候群、X連鎖リンパ球増殖症候群などがある。二次性は成人においてウイルス感染(特にEBウイルス)やリンパ腫、自己免疫疾患、白血病や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍に伴うものが多い。
症状
続する高熱が特徴的で、その他に、下痢、出血症状、皮疹、肝脾腫、汎血球減少、播種性血管内凝固障害、高LDH血症、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症などを認め、症状は多彩である。組織球やマクロファージの血球貪食による血液系の異常がもたらす症状が顕著である。重篤な臓器障害を来すこともあり、重症例では死亡することもある。
検査・診断
骨髄では組織球の増加を、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ球では血球貪食像を認める。
治療法
原発性ではHLH-94プロトコール、HLH-2004プロトコールといった国際組織球学会の提唱する治療指針に従い、抗がん薬と免疫抑制薬を組み合わせた治療を行う。重篤例では造血幹細胞移植が推奨されている。原発性の予後は非常に不良で、無治療の場合数か月以内に死に至り、治療を行っても生存率は50%程度とされている。
二次性(骨髄移植など)では基礎疾患の治療が中心となり、免疫抑制薬やガンマグロブリンの投与、血液浄化(血漿交換や血液透析)を行う場合もある。特にEBウイルスが原因の場合、進行が早いため速やかに治療を開始することが重要である。
引用参考文献
1)Kenneth L McClain.“Treatment and prognosis of hemophagocytic lymphohistiocytosis”.UpToDate.
2)渡邉栄三.血球貪食症候群の診断と治療.日本集中治療医学会雑誌.18,2011,13-16.