自律神経過緊張反射とは・・・
自律神経過緊張反射(じりつしんけいかきんちょうはんしゃ、autonomic hyperreflexia/autonomic dysreflexia;AD)とは、主に、第5~6胸髄レベルより高位の脊髄損傷患者にみられる自律神経の異常反射で、きわめて緊急な対応が必要な状況である。麻痺部に生じる刺激が引きがねとなって発生する。
原因
麻痺部の疼痛刺激や尿路、消化管といった管腔臓器の膨満によるものが多い。カテーテルの閉塞などによる膀胱充満が最も多い原因である。
その他、便秘による腸管の拡張や尿路感染症、尿管結石、カテーテル留置や挿入・抜去などの操作、褥瘡、手術、骨折、妊娠、分娩、感染、高温・寒冷などの環境の変化、衣類による体の圧迫など、原因はさまざまである。
機序
膀胱などからの刺激は第2~4仙髄を経由して脊髄を上行し、この刺激がそのまま交感神経を刺激し、脊髄損傷レベル以下の支配域で血管の収縮を起こすことによって発作性高血圧を引き起こす。
また、血圧が上昇すると、大動脈弓および頸動脈洞の圧受容体が反応し、心拍数の減少、動脈の拡張で血圧上昇を抑制しようとする。しかし、脊髄損傷では脊髄の損傷レベル以下に抑制の命令が伝わらないため、麻痺部の血管拡張が起こらない。これにより、血圧上昇が抑制できない一方で、非麻痺部に血管拡張による症状が出現し、迷走神経を介して徐脈発作も起こる。
症状
多彩な症状を呈し、突発性の高血圧、頭痛、徐脈、鼻閉、悪心、嘔吐、非麻痺部皮膚の発赤・発汗などがある。
治療法
自律神経過緊張による突発性の高血圧は、命に関わる重大な合併症(不整脈や脳出血など)をきたす可能性があるため、早急に原因診断と治療が必要である。緊急時の対応として、血圧を低下させるため体位を坐位とし、必要に応じて降圧薬を投与する。並行して原因検索を行い、原因に応じた治療が必要である。
予防
カテーテルや排便・排尿の管理、褥瘡、尿路感染に日頃から留意するべきである。