造血幹細胞移植とは・・・
造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)とは、血液細胞産生組織である骨髄に異常をきたし、血液産生(造血)が行われなくなった場合に、健康な骨髄に置き換えることにより造血機能を回復させる治療である。通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治癒が難しい血液疾患や免疫不全疾患に対して、完治を目指して行う。
骨髄液に存在し分化して血球成分となる造血幹細胞を輸注する治療で、近年は造血幹細胞が存在する臍帯血や、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与して末梢血に誘導した造血幹細胞を輸注する方法も盛んであることから、これら「骨髄移植」「臍帯血移植」「末梢血幹細胞移植」を総称して「造血幹細胞移植」と呼ぶ。
患者以外の健康な人からの移植を同種移植といい、自分の細胞を用いて行う移植を自家移植あるいは自己移植と呼ぶ(現在は自己移植の場合、自己末梢血幹細胞移植が主流となっている)。同種移植の場合、患者と骨髄提供者(ドナー)の白血球の抗原型(HLA型)が一致する必要がある。
通常、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、先天性免疫不全症候群(重症複合免疫不全、Wiskott-Aldrich症候群、Chediak-Higashi症候群、先天性好中球減少症、慢性肉芽腫など)、先天性代謝異常(ムコ多糖症、リピドーシスなど)などには同種造血幹細胞移植、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などには自己末梢血幹細胞移植が行われる。
移植の流れ
患者は移植の前処置として大量の化学療法や放射線照射など、自分自身の骨髄の造血幹細胞をすべて破壊する治療を受ける。そののち、ドナーあるいは患者自身から事前に採取した造血幹細胞を含む骨髄液または末梢採取血液を静脈に点滴投与する。これが「移植」である。移植された造血幹細胞が患者の骨髄にたどり着き血球成分を作り始める「生着」まで2週間から1か月程度かかる。生着が確認できると、クリーンルームなど防護環境を出ることが可能となる。
移植から一定期間が過ぎても血球成分が増えない、あるいは一度増えても再度減少してしまう「生着不全」も、移植方法により異なるが4~27%程度見られるといわれている。