腹水穿刺(腹腔穿刺)|消化器系の検査

看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。
今回は、腹水穿刺(腹腔穿刺)について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

腹水穿刺(腹腔穿刺)とはどんな検査か

腹水穿刺腹腔穿刺)は、触診、腹部超音波、CTなどで腹水貯留が確認された場合に、腹水を採取して性状観察、生化学検査、細胞診を行い、病態把握をすることと症状緩和のための排液を行うものである。

 

一般的に体腔穿刺で得られた液は、滲出液か漏出液かに分類される。さらにそれらの液の性状を詳しく分類することによって、液が貯留する原因となった疾患を推測することができる。

 

腹水の貯留する疾患はすべて適応となるが、近年CT検査、超音波検査内視鏡検査などの形態診断の発達により、本検査の施行頻度は減少しつつある。

 

腹水穿刺(腹腔穿刺)の目的

  • 肝硬変、バット‐ キアリ(Budd-Chiari)症候群、肝臓がん破裂、感染性腹膜炎(細菌性、結核性)、がん性腹膜炎(・大腸・膵臓がん)などの消化器疾患診断のほか、腎性・心臓性腹水との鑑別を行う。
  • 薬剤(抗がん剤)の投与。
  • 症状緩和のための排液。

 

腹水穿刺(腹腔穿刺)の実際

腹水穿刺(腹腔穿刺)の必要物品

皮膚消毒セット(イソジン液、綿球、鑷子膿盆) ・穿刺針(16~21Gサーフロー針またはハッピーキャス) ・注射針(23G、18G) ・シリンジ(10mL、20mL、50mL) ・延長チューブ ・三方活栓 ・輸液セット ・滅菌排液バック ・局所麻酔薬(1%キシロカイン) ・術者用:滅菌ガウン・滅菌手袋・マスク・キャップ ・滅菌ガーゼ ・滅菌穴あき覆布 ・処置用シーツ ・滅菌試験管 ・ハイポアルコール液 ・固定用絆創膏 ・メジャー ・注入する薬剤、超音波装置

 

腹水穿刺(腹腔穿刺)の方法

  1. 患者に検査・処置の必要性、目的、方法、注意点を十分に説明する。
  2. 施行前に排尿を済ませ、ベッドに処置用シーツを敷いて仰臥位で臥床してもらう。
  3. バイタルサインの測定と全身の観察を行う。
  4. 臍上で腹囲測定を行う。
  5. 必要物品を清潔操作でワゴンに用意する。
  6. 医師が穿刺部位を決定した後、皮膚消毒介助を行う。
  7. 局所麻酔の介助を行う。
  8. 腹部超音波のもとに、臍左前腸骨棘線(モンロー・リヒテル線)あるいは臍右前腸骨棘線の外側1/3または腹直筋外側の超音波像で腹腔内臓器が存在しない部位を穿刺する。
  9. 腹腔内液の流出を確認後、延長チューブおよび三方活栓と連結し、刺入部を固定して液を採取し、滅菌試験管に入れる。
  10. 排液を行う場合には、輸液セットと連結をして排液バックに貯留する。
  11. 必要時、薬剤注入を行う。
  12. 排液量、性状を観察する(表1)。
  13. 終了後、抜針して刺入部の消毒を行い、余分な消毒液をハイポアルコールに浸したガーゼで拭き取り、滅菌ガーゼを厚めに当てて絆創膏固定を行う。
  14. 臍上で再度腹囲測定を行う。
  15. バイタルサイン測定と全身の観察を行う。
  16. 患者の病衣を整え、注意事項の説明を行う。
  17. 医師の指示により30分~1時間の安静をとる。
  18. 翌日までバイタルサイン、出血、感染徴候、注入薬の副作用など、定期的に観察を行う。

表1滲出液と漏出液の鑑別

滲出液と漏出液の鑑別

 

腹水穿刺(腹腔穿刺)において注意すべきこと

  • 腸管の高度な拡張、手術後の癒着があると腸管穿孔を起こしやすい。また、肝硬変、バッド‐キアリ症候群では腹壁静脈が発達しており、穿刺部出血をまねくことがある。
  • 腹水穿刺に引き続き、腹水の大量排液を同時に行った場合、腹圧の急激な低下や循環血液量の減少により血圧低下(ショック)を起こすことがあり、処置後はバイタルサイン、腹部症状、穿刺部位の慎重な観察が必要。
  • 排液に伴う循環不全を予防するために廃液量は1000 mL/時を超えないようにし、1回の排液量は1000~3000 mL にとどめる。

 

腹水穿刺(腹腔穿刺)現場での患者との問答例

これからお腹の中にたまっている水を抜く検査・処置をします。

 

痛いですか。

 

皮膚の表面に麻酔をして検査するので、麻酔をするときにチクっとする痛みがある程度です。

 

わかりました。どうすればいいですか。

 

ベッドに横になっていただきます。これから先生が消毒をして、麻酔の注射をします。気分が悪くなったら、すぐにお声を掛けてください。

 

わかりました。お願いします。

 

今、麻酔をしますね。ちょっとチクっとします。これからお腹に針を刺しますので、動かないでください。

 

はい。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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