アナフィラクトイド紫斑(IgA血管炎)|血管病変②

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はアナフィラクトイド紫斑(IgA血管炎)について解説します。

 

松本賢太郎

静岡済生会総合病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1下腿を中心に、やや膨らみをもった紫斑を生ずる。

2全身症状として発熱、関節痛、腹痛、血尿、蛋白尿などを伴う場合がある。

3治療は安静が第一。とくに消化管や腎障害を伴う場合、ステロイド薬の全身投与が行われる。

4予後は腎障害の治療経過に左右される。治療後の再燃もみられる。

 

アナフィラクトイド紫斑(IgA血管炎)とは

定義・概念

とくに下腿などに、軽度の隆起を伴った紫斑が出現する(図1)。IgA血管炎ともよばれ、関節痛、腹痛や腎障害などの全身症状を伴うことがある。

 

図1アナフィラクトイド紫斑

下腿に出現することが多い。

アナフィラクトイド紫斑。下腿に出現することが多い。

 

原因・病態

紫斑の本態は真皮の小血管に生じた血管炎である。血管炎はIgAという抗体が関与して起こる。皮膚のほか消化管壁の血管炎による腹痛や下血、腎臓ではIgA腎症による腎障害を併発する場合がある。

 

病因としては、小児では溶血性連鎖球菌感染症のあとに発症することがあるが、それ以外にも細菌感染、ウイルス感染や薬剤、環境因子による発症が推測されている。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

下腿などに点状〜爪甲大までの紫斑が多発する。一部は丘疹状に隆起し、血疱を形成することがある(図2)。下腿以外に前腕や腹部にも生じることがある。

 

図2重症例

紫斑は盛り上がりをもち、血疱(→)も認められる。

アナフィラクトイド紫斑の重症例。紫斑は盛り上がりをもち、血疱(→)も認められる。

 

全身症状として発熱、関節痛、腹痛、血尿、蛋白尿などを伴う場合がある。また、前駆症状として上気道感染、扁桃炎などの感染症が存在することがある。

 

検査

血液生化学検査により、血小板減少や凝固異常を伴う紫斑病を除外する。

 

重症度の把握のために、尿検査を含む腎機能検査、第因子活性測定を行う。皮膚生検を行い、血管炎のレベル(深さ)や真皮血管へのIgA沈着の有無を見る。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

軽微な症例では、安静のみで治癒することがある。

ジアフェニルスルホン(DDS)や止血薬、血管を補強するための内服薬のほか、全身症状を伴う場合には安静を保つためにまず入院とし、ステロイド薬の投与を行う。

 

合併症とその治療

血尿や蛋白尿が同時に出現するような腎障害では、大量のステロイド薬投与が必要となる。

 

関節痛には消炎鎮痛薬で対応する。NSAIDsは腎障害を増悪する恐れがあるため、アセトアミノフェンの使用が望ましい。

 

激しい腹痛や下血を伴う場合は消化器内科と併診する。

 

治療経過・期間の見通しと予後

比較的軽症でステロイド薬の投与量も多くなければ、2週間ほどで退院できる。しかし再燃することもあり、注意深く経過を見る必要がある。

 

一般に予後は良好であるが、時にIgA腎症などの腎障害や消化管穿孔出血を併発する場合がある。

 

看護の役割

治療における看護

入院中はトイレ・洗面以外はベッド上安静が望ましい。腎障害を伴う場合には飲水量の保持に、また、関節症状や腹部症状の出現にも留意する。

 

フォローアップ

入院するような症例においては、退院後に生活強度が増すにつれ症状が再燃する場合がある。

 

退院してすぐは医師の指示があるまで安静を守り、それから徐々に普段の生活に慣れるようにしていく。再燃の徴候である紫斑の出現や関節痛、血尿の有無に留意する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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