多形滲出性紅斑|紅斑症①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は多形滲出性紅斑について解説します。
藤山俊晴
浜松医科大学皮膚科学講座
Minimum Essentials
1薬剤アレルギーや感染症などをきっかけに、全身に特徴的な皮疹が出現する。
2典型的には、標的状または虹彩状とよばれる辺縁と中心部の色調が濃い環状の紅斑が、四肢から躯幹にかけて出現する。
3治療としてステロイド外用、抗アレルギー薬内服、重症の場合はステロイド全身投与を行う。
4原因が除かれていれば2~3週間で自然治癒する。
多形滲出性紅斑とは
定義・概念
薬剤や感染に対するアレルギーまたは免疫過敏反応と考えられている。四肢を中心に特徴的な皮疹がみられる、一過性の炎症性疾患である。
原因・病態
薬剤投与または感染症がきっかけとなる。
感染症としてはヘルペスウイルス感染症、マイコプラズマ感染症、溶連菌による上気道炎が多い。薬剤が原因の場合には、皮疹が出現する1週間前ごろから投与開始した薬剤が原因のことが多い。
しかし、はっきりとした原因が特定できないこともある。感染やアレルギーなどの免疫変調に伴って皮疹が出現すると理解されている。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
病名のとおり、多形で紅色の丘疹や、腫れぼったく赤みの強い浮腫性紅斑、典型的な標的状または虹彩状の滲出性紅斑(実際に水疱化したり、今にも滲出液がにじみ出たりしそうな紅斑)が混在する「多形」な皮疹が混在している(図1)。
全身症状は通常ないが、発熱や全身倦怠感などを伴うこともある。粘膜にも強い病変がある場合には、スティーヴンス・ジョンソン(Stevens-Johnson)症候群との鑑別が重要である。
検査
全身状態の把握や原因検索のためには血液検査を行う。血液検査では特異的な所見はないが、CRP値上昇や血沈亢進、アレルギー機序の場合には好酸球数増多、マイコプラズマ感染症の場合には抗マイコプラズマIgM抗体の上昇やペア血清での抗体価上昇がみられる。
薬剤性の場合には、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が陽性になることがある。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
治療は対症療法的に皮疹にステロイド薬を外用したり、抗アレルギー薬を内服したりするが、水疱形成の激しい例や粘膜疹のある例、全身症状を伴う例では、ステロイド薬を全身投与することもある。
合併症とその治療法
感染症を伴っている場合にはその治療を、薬剤アレルギーがある場合には原因薬剤を中止する。
治療経過・期間の見通しと予後
全身症状を伴っている場合や、皮疹や粘膜疹が高度な場合は入院して経過を観察する。
看護の役割
治療における看護
皮膚症状出現前に疑わしいきっかけがなかったかどうか、原因検索に協力してもらう。皮膚・粘膜の保護に努め、皮疹部は症状に応じて外用薬を愛護的に塗布する。
フォローアップ
入院中は、発熱や粘膜疹の増悪に注意する。退院後の再発はまれであるが、薬剤性の場合には再投与を禁止する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂