スティーヴンス・ジョンソン(Stevens-Johnson)症候群|紅斑症②

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はスティーヴンス・ジョンソン(Stevens-Johnson)症候群について解説します。

 

藤山俊晴
浜松医科大学皮膚科学講座

 

 

Minimum Essentials

1多くの場合、薬剤に対するアレルギー反応によって、発熱などの全身症状と皮膚・粘膜症状が出現する。

2粘膜のびらんおよび全身の皮膚の水疱、びらん、多形紅斑が急激に出現し、発熱などの全身症状も伴う。

3中等量~高用量のステロイド薬全身投与を行う。全身の皮膚のびらん、水疱に対しては対症療法を行う。

4治療開始後、ステロイド薬投与に順調に反応した場合には皮疹の新生が止まり、数週間で投与中止できる。

 

スティーヴンス・ジョンソン症候群とは

定義・概念

多形紅斑が全身広範囲に出現し、眼、口唇、口腔、生殖器、肛門などの粘膜病変と全身症状を伴う。多くは薬剤が原因である。なお、水疱、びらんの面積が体表面積の10%未満のものをスティーヴンス・ジョンソン症候群とよび、それ以上(海外では30%以上)のものを中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)とよぶ。

 

原因・病態

多くは薬剤に対するアレルギーが原因で発症するが、ヘルペスウイルスやマイコプラズマ感染症を契機に発症することもある。活性化したリンパ球や単球の働きにより表皮が壊死し、水疱、びらんを形成する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

皮疹は顔面や体幹部に多くみられる多形紅斑で、手足にも症状がみられることがある。皮疹の一部は水疱を形成し、びらん化する。眼や口腔などの粘膜にも、しばしばびらんを認める(図1)。

 

図1 スティーヴンス・ジョンソン症候群

皮疹は通常やや非典型的な標的状の多形紅斑を呈し(a)、口唇粘膜や口腔粘膜の水疱、びらんを伴う(b)。

スティーヴンス・ジョンソン症候群

 

びらんは、進行すると出血し血痂を伴ったり、偽膜を形成したりする。眼粘膜症状は後遺症を残すこともあり、注意が必要である。皮膚・粘膜症状に加えて高熱や全身倦怠感、関節痛、消化器症状などの全身症状もほぼ同時に出現する。

 

びらん部位は疼痛が激しい。失明や死に至る例もあり注意が必要である。

 

検査

皮膚生検による病理学的な表皮の壊死性変化が診断基準に含まれている。本症に特異的な血液検査所見はないが、CRP高値、血沈亢進などの炎症所見がみられる。薬剤性の場合には、発症早期より薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が陽性になることがある。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

比較的高用量のステロイド薬を全身投与する。効果が不十分な場合には γ グロブリン大量投与や、血漿交換療法、ステロイドパルス療法を考慮する。全身療法に加えて、皮膚および粘膜のびらんに対して対症療法的に局所療法も行う。

 

合併症とその治療法

感染症を伴っている場合はその治療を、薬剤アレルギーがある場合は原因薬剤を中止する。

 

治療経過・期間の見通しと予後

治療に反応すれば、数週間でステロイド薬を減量・中止可能である。皮疹や粘膜疹の予後は、その程度によるが、通常は週単位の経過で上皮化する。

 

看護の役割

治療における看護

口腔内粘膜疹が高度な場合には食事摂取にも強い疼痛があり、中心静脈栄養管理や食事内容の検討が必要なことが多い。

 

全身の皮膚のびらんは、熱傷に準じた洗浄・保護の処置を行う。包帯交換の際は強い疼痛を伴うことが多いが、刺激の少ない温めた生理食塩水を使用したり、鎮痛薬を併用したりして清潔を維持し、感染予防に努める必要がある。

 

フォローアップ

薬剤性の場合には、原因薬剤を明確にし、患者にも覚えておいてもらい、生涯にわたって絶対に再服用しないように指導する。皮疹が高度であった場合には、瘢痕化や眼病変の後遺症に注意する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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