結節性紅斑|紅斑症③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は結節性紅斑について解説します。
藤山俊晴
浜松医科大学皮膚科学講座
Minimum Essentials
1種々の誘因や基礎疾患に伴って生じるしこりを触れる紅斑で、皮下脂肪織を中心とした炎症性疾患である。
2下腿伸側を中心に圧痛を伴う紅色の結節または硬結が出現する。上気道感染や炎症性腸疾患などに合併する場合もある。
3安静が重要で、薬物療法として非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、ヨウ化カリウムの内服が行われる。難治の場合にはステロイド薬内服も行われる。
4治療開始後、安静が維持できれば2週間ほどで軽快することが多い。
結節性紅斑とは
定義・概念
下腿伸側を中心に有痛性の紅色結節または硬結を触れる紅斑が出現し、病理組織学的には、皮下脂肪組織の隔壁を中心とした脂肪織炎を特徴とする疾患である。
種々の誘因や基礎疾患を伴っていることが多い。
原因・病態
溶連菌、結核菌、真菌、ウイルスなどの感染に続発する場合や、炎症性腸疾患〔潰瘍性大腸炎、クローン(Crohn)病〕、サルコイドーシス、ベーチェット(Behçet)病などの基礎疾患を背景として発症する場合がある。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
圧痛を伴った鮮紅色の結節状の紅斑や浸潤を触れる紅斑が、下腿前面を中心に多発する(図1)。皮疹の境界はやや不明瞭で局所の熱感がある。
検査
血液検査では本症に特異的な所見はない。白血球増多、CRP値上昇、血沈亢進などの炎症所見がみられる。溶連菌感染に続発するものではASOが高値となる。
結核の鑑別として、T-スポット®.TB(T Spot)やクォンティフェロン®TBゴールド(QFT-3G)を行うこともある。炎症性腸疾患などの基礎疾患の存在が疑われる場合にはその検査を行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
安静と下肢の挙上が重要である。薬物療法としてNSAIDs、ヨウ化カリウムの内服が行われる。重症例では、ステロイド薬の全身投与を行うこともある。
合併症とその治療法
感染症を併発している場合には抗菌薬を併用する。炎症性腸疾患や他の基礎疾患が認められた場合には、その治療を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
安静が維持できれば、薬物療法で2週間ほどで軽快することが多い。基礎疾患がある場合や、十分な安静が維持できない場合などでは再発することもある。
看護の役割
治療における看護
入院加療の重要な目的の1つは安静の保持である。入院中は可能な限り下肢を挙上して、ベッド上安静とする。誘因や基礎疾患が特定できない場合もあるので、患者の細かい訴えを傾聴する。
フォローアップ
通常、各皮疹は数週間以内に軽度の色素沈着を残して消退する。しかし再発することもあり、長時間の立ち仕事などは再発リスクとなるので、避けるように指導する。上気道感染後に悪化することもあるので、感染予防に努めてもらう。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂