紅皮症

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は紅皮症について解説します。

 

三澤淳子
浜松医療センター皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1全身の皮膚の90%以上に紅斑や潮紅がみられる状態を示し、原因となる疾患は湿疹・皮膚炎から悪性腫瘍など多岐にわたる。

2皮膚症状として広範囲に紅斑や落屑、瘙痒感が、全身症状として発熱、リンパ節腫脹、脱水、低蛋白血症などがみられる。

3原疾患を特定するために精査を進め、それに準じた治療を行う。皮疹に対して抗ヒスタミン薬ステロイド外用剤が使用される。

4慢性に経過することが多く、原疾患により予後は異なる。

 

紅皮症とは

定義・概念

全身の皮膚の90%以上に紅斑や潮紅がみられる状態である。なお、紅皮症とは原疾患により生じた症候の名称であり、診断名ではない。

 

原因・病態

紅皮症の原因は以下に大きく分けられる。

 

①既存の皮膚疾患に続発する紅皮症:湿疹・皮膚炎、乾癬、水疱症、角化症など。

②薬剤性紅皮症:抗痙攣薬、抗菌薬、降圧薬、サルファ剤、アロプリノールなど。

③悪性腫瘍に伴う紅皮症:菌状息肉症、セザリー(Sézary)症候群、白血病悪性リンパ腫、内臓悪性腫瘍など。

④原因不明

 

紅皮症のなかでは湿疹皮膚炎群に続発するものの頻度がもっとも高く、薬剤性紅皮症、乾癬性紅皮症がこれに次ぐ。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

全身に紅斑、潮紅がみられ、落屑を伴う(図1)。

 

図1 紅皮症

a:体幹。b:下肢。

紅皮症(体幹、下肢)

 

かゆみを伴うことが多い。全身症状として発熱、悪寒、全身倦怠感、表在リンパ節の腫脹、浮腫などがみられる。脱水、低蛋白血症、頻脈などの全身管理を要する症状を伴うことも少なくない。

 

慢性化すると皮膚の光沢や色素沈着がみられるようになり、脱毛や爪の変形脱落、掌蹠の過角化、亀裂をきたす。

 

検査

紅皮症の原因となる疾患を見つけるべく検査を進める。詳細な問診や視診は、原疾患の推測につながる場合があるため重要である。皮膚生検や採血は初回だけでは診断に至らないこともあり、必要に応じて繰り返し行う。

 

血液疾患や内臓悪性腫瘍を疑う場合は、骨髄検査、CT、MRI、PET、消化管内視鏡検査などの全身精査を行う。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

原疾患が特定された症例では、それに準じた治療を行う。

湿疹・皮膚炎に続発する紅皮症には、ステロイド薬の外用と抗ヒスタミン薬の内服が有効である。乾癬に続発する紅皮症には、ビタミンD3含有軟膏やステロイド剤の外用、紫外線照射、エトレチナートの内服、シクロスポリンの内服、生物学的製剤の投与などが行われる。薬剤性紅皮症では原因薬剤を中止し、ステロイド剤の外用、時に内服が行われる。

 

合併症とその治療法

皮膚バリア機能の障害、落屑による蛋白喪失などにより、脱水や低蛋白血症を生じやすい。その場合は水分や電解質、蛋白の補正といった全身管理が必要になる。

 

治療経過・期間の見通しと予後

慢性に経過することが多い。悪性腫瘍に続発する場合は、原疾患の予後に左右される。

 

看護の役割

治療における看護

保清、保湿といったスキンケアは基本となる。皮膚が脆弱化していることが多いため、ケアの際には強い摩擦を避けるようにする。

また、体温調節機能が低下することもあるため、室温や寝具の調整に気を配る。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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