自己免疫疾患ってどういうもの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は自己免疫疾患について解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
自己免疫疾患ってどういうもの?
正常な免疫系は自己と非自己を正確に認識し、非自己だけを排除するように反応します。このような免疫システムは、免疫寛容という現象に基づいています。免疫寛容とは、胎児期にそのヒトのリンパ球が認識したものは自己と認識する(すなわち、そのようなものには免疫システムを働かせない)というシステムです。
ところが、様々な原因でこの免疫寛容が破綻すると、自己の組織を異物と認識してしまいます。そして自己に反応する抗体や免疫細胞を作り出し、組織や細胞を攻撃し始めます。その結果、組織の損傷や炎症が引き起こされる疾患を自己免疫疾患と呼んでいます。
自己免疫疾患は様々な原因で起こります。正常な状態では体内の特定領域にある物質が、何らかの原因で血液中に入り込み、免疫システムによって異物(非自己)として感知される場合があります。体内の正常な物質がウイルスや日光、薬剤、放射線などによって変性し、異物とみなされる場合もあります。ある体内物質に似た異物が侵入したために、免疫機能が混乱を起こして体内の物質まで攻撃対象にしてしまうという場合もあります。
代表的な自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)などがあります。これらの疾患は病気そのものが遺伝するのではなく、免疫寛容の破綻のしやすさが遺伝すると考えられています。感染などが引き金となって発症します。
メモ1全身性エリテマトーデス(SLE)
関節リウマチとともに、代表的な膠原病の1 つです。関節炎、関節痛、発熱、皮膚の紅斑、貧血、嘔吐、体重減少、筋肉痛、蛋白尿、白血球減少など、全身の臓器に障害が現れます。抗核抗体や抗DNA 抗体が認められます。
メモ2関節リウマチ(RA)
複数の関節に左右対称に関節炎が起こることが多いです。関節に腫れ、熱感、運動制限、変形などが生じます。また、朝のこわばりは特徴的な症状です。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版