ICUでよく使用される鎮痛薬と、その特徴は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「よく使用される鎮痛薬」に関するQ&Aです。
古賀雄二
川崎医療福祉大学保健看護学科准教授
ICUでよく使用される鎮痛薬と、その特徴は?
ICU患者の鎮痛にはフェンタニルが使いやすく、その他にペンタゾシンやブプレノルフィンがよく使用されます。
〈目次〉
ICUで使用される鎮痛薬
ICUでよく使用される鎮痛薬を表1に示した。
a.麻薬 |
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b.麻薬拮抗性鎮痛薬 |
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c.非ステロイド性抗炎症薬 | |
d.その他 |
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PADガイドラインでは、非神経因性疼痛では静注オピオイドを第一選択とすることを推奨し、神経因性疼痛には抗てんかん薬として知られるガバペンチンやカルバマゼピンの経腸投与の追加が推奨されている。
麻薬
麻薬の共通の作用として、交感神経を抑制し迷走神経を緊張させるため、呼吸・循環に加えて消化管への影響など、全身の観察が必要となる。
1フェンタニル
フェンタニルは、即効性があり、モルヒネの50〜100倍の鎮痛効果をもつが、持続時間が短いため、持続静脈投与を行う。
心筋収縮力抑制作用などが少なく、循環が不安定な場合にはモルヒネよりも推奨される。
2モルヒネ
モルヒネは作用時間が4~5時間と長く、間欠的投与がよく行われる。
モルヒネは、循環器作用として血管拡張作用、ヒスタミン遊離作用による血圧低下が生じやすく、腎障害がある場合は作用が遷延しやすい。
呼吸器作用として呼吸抑制があり、用量依存性に強くなる。咳反射も抑制される。
消化器作用として、中枢性・末梢性に消化管運動が抑制される。胃から十二指腸への通過遅延とともに、下部食道括約筋収縮が低下するため、胃内容物が逆流しやすくなる。
3麻薬拮抗薬
麻薬拮抗薬としてナロキソンがある。麻薬による呼吸抑制を改善する一方で、疼痛の出現や血圧上昇、頻脈、不整脈などの副作用もある。
ナロキソンは、モルヒネの消化器抑制を拮抗する。
麻薬拮抗性鎮痛薬
麻薬拮抗性鎮痛薬は麻薬と拮抗的に作用するので、併用しないのが一般的である。
1ペンタゾシン
ペンタゾシンは静脈投与や筋肉投与を行う。3〜4時間の鎮痛効果が得られるが、術後痛に使用した場合には、習慣性・依存性が生じる場合がある。
副作用には、呼吸抑制、血圧・肺動脈圧上昇などがあり、心筋酸素消費量を増加させるため、心疾患のある患者には特に注意する。
2ブプレノルフィン
ブプレノルフィンの副作用には呼吸抑制があるが、鎮痛効果はモルヒネの25〜40倍で、作用時間は6~9時間である。
NSAIDs(エヌセーズ)
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)*は、他の鎮痛薬使用を減らす利点がある。
血圧低下、腎障害、消化管出血、血小板機能抑制などの副作用があり、高齢者や血管内脱水を呈する患者には注意が必要である。
NSAIDs過敏喘息の既往に注意する必要がある。
- NSAIDs(non-steroidalanti-inflamatorydrugs):非ステロイド性抗炎症薬
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本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社