人工呼吸中の鎮痛評価は、どのように行うの?|人工呼吸ケア
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「鎮痛評価」に関するQ&Aです。
古賀雄二
川崎医療福祉大学保健看護学科准教授
鎮痛評価は、どのように行うの?
主観的痛み評価スケールと客観的痛み評価スケールを組み合わせ、かつ、患者の多彩な訴えを加味して評価することが必要です。
〈目次〉
痛みの指標
患者の意識状態は、self-report(セルフレポート:患者の自己申告)と鎮痛・鎮静・せん妄・昏睡の評価を組み合わせて表現するという前提に立つ。
最良の痛みの評価はself-reportである。しかし、患者は病態や薬剤の影響により必ずしも痛みを的確に表現できないため、主観的痛み評価スケールと客観的痛み評価スケールを組み合わせて評価を行うとともに、鎮静深度やせん妄・昏睡の程度を加味して総合的な解釈を行う。
バイタルサインのみを痛みの指標としないほうがよいが、バイタルサインを組み合わせるのはよい。
患者の多彩な痛みのとらえ方としては、痛みは神経因性疼痛と非神経因性疼痛に大別されることを理解する必要がある。
痛みの評価法
痛みの評価は、その時々の訴え・スケールの数値の大小だけでなく、それらの経時的な変化を評価することが重要である。
1主観的痛み評価スケール
主観的痛み評価スケールとしては、10cmの線上に痛みの程度を患者に書き込んでもらうVAS(ヴァス:ビジュアルアナログスケール)や、0から10までの11段階のなかでの程度を患者に表現してもらうNRS(数値評価スケール)が代表的である。
2客観的痛み評価スケール
客観的痛み評価スケールとしては、BPS(表1)やCPOT(表2)が挙げられる。この2つは、PADガイドラインで推奨されているスケールである。
表2CPOT(Critical-Care Pain Observation Tool:クリティカルケア疼痛観察ツール)
CPOTと主観的痛み評価スケールと組み合わせることで、人工呼吸の前後での一貫した痛み評価が行いやすい(図2)。
BPSやCPOTには呼吸状態の評価項目が含まれている。その視点に立つと、ボルグスケール(患者が呼吸苦の状態を数値で表現する)なども、痛みや不快感の評価スケールと考えることができ、患者の痛みを評価する側面は多彩であるといえる。
痛みの評価スケール(主観的・客観的)によって量的評価を経時的に行い、その内容をself-reportやインタビューによって質的に評価するとよい。
痛みの介入基準(『PADガイドラインってなに?』J-PADガイドラインケアの概要)に達していなくても、痛みが存在しないわけではないことに留意し、潜在的な痛みや不快感(discomfort)の緩和につとめる必要がある。
Column神経因性疼痛と非神経因性疼痛って?
痛みは、生体の防御機能の1つである。
痛みは、何らかの原因によって末梢神経終末から発痛物質(ケミカルメディエーター)が産生され、炎症が発生することからはじまる。炎症は、末梢神経受容器を刺激し、その刺激が脊髄神経を通って延髄・大脳皮質・視床下部へと伝えられることで、痛みとして認識される。
痛みの病態の分類法にはさまざまあるが、神経学的機序からみた分類法が、もっとも臨床では活用されている。
表3神経学的機序からみた痛みの分類
(道又元裕)
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本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社