SP療法(化学療法のポイント)/胃がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、胃がん(胃癌)の患者さんに使用する抗がん剤「SP療法(S-1+シスプラチン療法)」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『SP療法(看護・ケアのポイント)/胃がん』
神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
〈目次〉
SP療法は胃がんの患者さんに行う抗がん剤治療
SP療法(S-1+シスプラチン療法)は、切除不能な胃がん患者さんに対する抗がん剤治療のファーストライン(初回化学療法)です。S-1(ティーエスワン)は内服、シスプラチン(ランダ)は点滴の薬剤です。
抗がん剤治療による副作用には個体差がありますが、SP療法では、S-1(ティーエスワン)による消化器症状(嘔気や嘔吐など)が強く出たり、シスプラチン(ランダ)による腎機能障害が起こる場合がありますので注意しましょう。
SP療法で使用する薬剤
SP療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1SP療法で使用する薬剤
SP療法のレジメン
S-1(ティーエスワン)は、1~21日目(Day1~21)に投与し、22~35日目は休薬します。シスプラチン(ランダ)は、8日目に投与します。(表2)。
表2SP療法のレジメン
SP療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3SP療法の投与方法
表4S-1の1回投与量
上記を1コースとして、抗腫瘍効果がなくなるか、患者さんに許容できない副作用が出ない限り継続します。
memo許容できない副作用があった場合
抗がん剤治療では副作用をコントロールしながら継続していますが、副作用によって抗がん剤を減量しても続けることが危険、もしくは患者さんにとって辛くて続けられない場合には許容できない(不耐)として、このレジメンでの治療は中止となります。
SP療法の代表的な副作用
SP療法の代表的な副作用は、腎機能障害、嘔気や嘔吐、骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、便秘、末梢神経障害、脱毛、味覚異常、色素沈着、流涙、口内炎、吃逆などがあります。
シスプラチン(ランダ)は、腎機能障害を起こす代表的な抗がん剤のため、尿量が減ると腎臓が障害されてしまいます。しっかりとした輸液、水分摂取、必要に応じた利尿剤の使用が大切です。また、シスプラチン(ランダ)によって吃逆が出る患者さんが多く、止めるのに難渋することもあります。
急に起こる副作用は、腎機能障害、嘔気や嘔吐、便秘、吃逆などがあります。
遅れて出てくる副作用は、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛、味覚異常、色素沈着、流涙、口内炎などがあります。
SP療法の治療成績
切除不能な胃がんに対する抗がん剤治療は治癒することは難しく、延命的な治療です。
腫瘍を小さくする可能性は50%で、生存期間中央値は13カ月です。
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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。