FP療法(看護・ケアのポイント)/食道がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、食道がん(食道癌)の患者さんに使用する抗がん剤「FP療法(フルオロウラシル+シスプラチン療法)」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。
第1話:『FP療法(化学療法のポイント)/食道がん』
神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
〈目次〉
必ず覚えて! FP療法の注意点
投与前の注意点
進行食道がんの患者さんは食事摂取が難しくなっていることが多いため、治療前の栄養状態や経口摂取量について確認をしておきましょう。
シスプラチン(ランダ)は、腎機能障害を起こす代表的な抗がん剤です。尿量が減ると腎臓が障害されてしまいます。治療前に脱水がある場合には、抗がん剤投与によって腎機能障害が強く出るため、しっかりとした輸液、水分摂取、必要に応じた利尿剤の使用が必要です。
FP療法のポイントA
- フルオロウラシルは5日間の持続投与のため、患者さんは継続して点滴された状態になります。治療前に説明しておきましょう。
FP療法のポイントB
- シスプラチンによる腎機能障害に注意して、尿量を測定しよう!
投与中の注意点
尿量を十分に確保しておく必要があります。尿量が足りない場合は点滴を増やすか、利尿剤の投与などの処置を検討します。嘔気がなければ水分摂取を促すようにしましょう。
シスプラチン(ランダ)によって吃逆が出る患者さんが多く、止めるのに難渋することもあります。主治医と相談して、適宜薬剤の投与を検討しましょう。
memo吃逆の対応は難しい
吃逆の対応法は、メトクロプラミド(プリンペラン)の静注や、クロルプロマジン(ウィンタミン、コントミン)や漢方薬である柿蒂湯(していとう)が使用されます。しかし、コントロールが難しいことが多いのが現状です。
FP療法のポイントC
- 吃逆に注意! 患者さんに事前に説明しておくことで不安を和らげましょう。
投与後の注意点
投与数日後には骨髄抑制が生じる可能性があります。また、嘔気により食事摂取が低下すると全身状態が悪化するため、経口摂取が十分でなければ輸液をするようにしましょう。
FP療法時の申し送り時のポイント
尿量については必ず伝えましょう。尿量が少ないことは腎機能障害と直接関連するため、必要があれば点滴を増やすことや、利尿剤の投与を考えないといけません。
申し送り例
本日10時から、食道がんに対してのFP療法を開始しています。本日の血液検査で、抗がん剤投与開始に問題がないことを確認しています。今は、フルオロウラシル(5-FU)の持続点滴が開始となっていますが、有害事象は今のところ見られていません。
今までの総輸液量は◯mLで、尿量は◯mLと十分に維持されています。追加の利尿剤の投与や、輸液負荷は行っていません。尿量が少なければ、指示書に従って対応してください。
FP療法時の看護記録に記載すべきこと
来院時の発熱の有無、食事や排便、睡眠の状況などについて確認しましょう。また、数コース投与してくるとシスプラチン(ランダ)投与によるしびれが出ることもあるため、手足のしびれについて記載しましょう。
また、抗がん剤投与中の尿量や嘔気などの症状、その程度を記載しましょう。
患者ケア・看護ケアはココを押さえる
進行食道がんの患者さんは全身状態が悪いことも多いです。また、食道狭窄によって食事の量が十分でないことも多いため、脱水が背景にあることも考えられます。シスプラチン(ランダ)投与による腎機能障害を起こさないためにも経口的に水分摂取を促しましょう。
経口的に水分の摂取が難しい患者さんには点滴を増やす必要があるので、その点に注意して、患者さんの状態を把握しましょう。
- 第1話:『FP療法(化学療法のポイント)/食道がん』
- ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。