体液のpH(水素イオン濃度)はどれくらい?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は体液のpH(水素イオン濃度)について説明します。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

体液のpH(水素イオン濃度)はどれくらい?

血液やリンパ液などの体液はすべて弱アルカリ性(pH7.40±0.05)に保たれています。pHが7.40±0.05と非常に狭い範囲で保たれているのは、この範囲内でしか全身の細胞が機能を発揮できないからです。

 

pHが7.35未満になった状態をアシドーシス、7.45以上になった状態をアルカローシスといいます(表1)。アシドーシス、アルカローシスにはそれぞれ、呼吸不全が原因で起こる呼吸性のもの、腎臓や消化器の障害による代謝性のものがあります。

 

表1酸塩基平衡の障害

酸塩基平衡の障害

 

アシドーシスになると、浅く不規則な呼吸、血圧の低下、ショック、不整脈頭痛、昏睡などの症状が現れます。アルカローシスになると、痙攣、不整脈、反射亢進、しびれ、発汗、意識障害、昏睡などの症状が現れます。

 

pHを制御しているのは、呼吸、代謝などです。体液のpHが正常範囲からずれると、肺でのガス交換による調整、腎臓での再吸収による調整、や腸での吸収による調整が行われ、pHを一定に保つようにしています。

 

MEMO1呼吸性アシドーシス

換気不全によって二酸化炭素(CO2)が体内に蓄積された状態。急性呼吸器不全、慢性呼吸器疾患などで生じます。末梢血管の拡張、交感神経の刺激があるため、発汗、皮膚の発赤、心拍数の増加、不安、失見当識、混迷などの症状が出ます。

MEMO2代謝性アシドーシス

糖尿病など腎機能不全などにより、炭酸水素イオン(HCO3-)が低下した状態。インスリン不足があると糖の不完全燃焼を起こし、ケトン体が蓄積されるなどで起きる場合もあります。

MEMO3呼吸性アルカローシス

過換気によって二酸化炭素が過度に体外に排出され、血液の二酸化炭素分圧が低下した状態。発熱やパニック障害などによって起きる過換気症候群によって生じます。

MEMO4代謝性アルカローシス

胃液の嘔吐によって胃酸が減少すると生じます。

 

※編集部注※

当記事は、2018年12月24日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版

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