最終更新日 2018/07/09

過換気症候群

過換気症候群とは・・・

過換気症候群(かかんきしょうこうぐん/hyperventilation syndrome)とは、一過性の分時換気量の増大によりさまざまな症状が生じることを指す。

 

原因

精神的な不安や極度の緊張、パニック障害といった精神科的病態とも関連があると考えられている。

 

症状

呼吸困難、めまい、四肢のしびれ、胸痛、動悸、発汗などがある。過呼吸・過換気により呼吸性アルカローシスになると低カルシウム血症の症状が出るため(血液がアルカリ性になると、イオン化カルシウムが蛋白と結合する)、テタニーと呼ばれる手足のしびれや筋肉の痙攣が起こる。また同じ理由から、手をすぼめた姿位(助産師の手)が見られ、血圧計で測定する際に増悪するトルーソー徴候が出現したり、頬部や顎関節を叩くと顔面神経が刺激され口角が上がるクボステック徴候が見られたりする。

 

それらの症状が不安と苦痛をさらに増大させ、過呼吸が悪化するという悪循環に陥る。

 

診断

明確な診断基準はなく、現病歴既往歴、身体所見などで総合的に判断する。
診断において特に重要なのは、ほかの重大な疾患(肺塞栓症や気管支喘息発作、上気道狭窄、冠動脈疾患、代謝性アシドーシスなど)を見逃さないことである。

 

治療

安心させるなどの対処療法を行う。意識的に呼吸を遅くするあるいは呼吸を止めることで症状は改善することが多い。以前は紙袋の中身を吸わせるペーパーバッグ法がよく行われていたが、低酸素血症の懸念があるためルーチンとしては推奨されない。もしペーパーバッグ法おこなう場合には、経皮的酸素飽和度を測定しながら行うことが望ましい。

 

一般的に予後は良好で、長くとも数時間で症状は改善する。

 

予防

予防には認知行動療法や教育が重要である。繰り返す場合には、薬物療法(β阻害剤やベンゾジアゼピン、SSRIなど)を行うことがある。

執筆: 瀬尾龍太郎

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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