高血圧はなぜ起きるの?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「高血圧」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
高血圧はなぜ起きるの?
血圧は、血流拍出量×末梢血管抵抗で求められます。
すなわち、心臓からの血液拍出量と末梢血管抵抗の両方、あるいはどちらかに異常が起こると、血圧に異常が生じることになります。血液拍出量が多ければ多いほど、また、末梢血管抵抗が強ければ強いほど、血圧は高くなります。
もう少し分解して考えると、血液拍出量を決めるのは心筋の収縮力、心拍数、循環血液量などで、末梢血管抵抗を決めるのは全動脈の内径の総和ということになります。
血管抵抗を末梢血管抵抗と特定しているのは、大動脈のように太い血管は、圧力に応じて血管の内径を拡張・収縮させることができるのに対し、末梢血管はこの振れ幅が小さく、血管抵抗が大きいからです。
全血管抵抗の2/3は末梢血管によるものです。 臨床的には、上記の要因のうち末梢血管抵抗が高まった状態が常態化したものを高血圧症としています(表1)。
表1高血圧の判定基準
収縮期血圧が100mmHgより低く、低血圧特有の症状(だるい、疲れやすい、食欲不振、めまい、立ちくらみ、不眠など)がある場合、低血圧と診断されます。低血圧には、原因がはっきりしない本態性低血圧、原因疾患や薬物がはっきりしている症候性低血圧、急に立ち上がった時に起こる起立性低血圧などの種類があります。
COLUMN高血圧と動脈硬化の関係
高血圧状態が続くと、まず末梢血管(小・細動脈)の血管壁が、圧に耐えるために肥厚していきます。その結果、もともと細かった末梢血管の内径がさらに狭くなります。この状態が、高血圧を常態化させる大きな要因であると考えられています。
小・細動脈が狭くなると、必要とされる血液を送るために、さらに高い圧力をかけなければならなくなります。この状態が続くと、異常のない大動脈や中動脈にも高い圧力がかかるようになり、内皮細胞の損傷などによって動脈硬化(アテローム硬化)が促進されていきます。
こうした変化は心臓にも及びます。動脈硬化のために大動脈や中動脈が伸縮性を失うと、それまで以上に高い圧力で血液を送り出さなければ末梢まで行き届かなくなってしまいます。その結果、心筋の運動量が増して心臓は肥大し、必要とする酸素量も増えてきます。
特に、運動時など、酸素をたくさん消費する時に心筋が酸素不足に陥り、胸痛を引き起こすこともあります。
メタボリック症候群は高血圧に糖尿病や脂質異常症、肥満などを合併している状態であり、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険性が格段に高くなります。これは、これらの合併症によって動脈硬化がさらに促進されるためです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版