運動や体位によって血圧はどう変化するの?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「血圧の変化」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
運動をすると血圧はどう変化するの?
運動をすると血圧が上がります。これは酸素消費量と関連しています。
運動時には筋肉の酸素需要が増えるため、肺では空気を多量に取り込もうとして呼吸は速く、深くなります。
また、心臓は筋肉の要求に応えるため、血液を多量に送り出すように心拍数を上げて、心拍出量を増加させます。そのため血管壁にかかる圧が増し、血圧が高くなります。
運動を止めてもすぐに血圧や心拍数が下がらないのは、筋にたまった二酸化炭素や老廃物を除去しようとするからです。
また、体内で生産された熱を発散させるため、体表毛細血管が拡張し、血液を多量に送る必要があるからです。酸素の需要量が減ると、血圧、心拍数、脈拍などは元に戻ります。
体位によって血圧が変わるのはなぜ?
体位によって血圧が変わる理由は、体位を変えることによって心臓に戻る血液量が変化し、心拍出量も増減するためです。
たとえば、臥位や座位から立位になると、一時的に血液が下肢にうっ滞します。静脈から心臓に戻る血液量が減って心臓からの拍出量は減少し、収縮期血圧も拡張期血圧も下がります。
収縮期血圧は、立位<座位<臥位の順で高くなり、拡張期血圧は立位でやや高く、座位>臥位の順で低くなります。
また、座位から立位になったとき、血圧調節機能が働かないと身体の最上部にある脳の血液が不足し、脳貧血を起こします。これを防ぐために、末梢血管を収縮させ、同時に心拍数を増加させて1分間に拍出される血液量を調節する仕組みになっています。
※編集部注※
当記事は、2016年7月14日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版