不整脈はなぜ起きるの?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「不整脈」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
不整脈はなぜ起きるの?
脈が乱れる状態を不整脈とよびます。
原因は、右心房の洞房結節(ペースメーカー)から発生する刺激を心筋に伝える刺激伝導系に、何らかの障害が起こるためです。刺激伝導系の異常によって調律が速くなったり、遅くなったり、乱れたりし、心筋の興奮が規則正しく繰り返されなくなります。
不整脈には期外収縮(きがいしゅうしゅく)、徐脈(じょみゃく)、頻脈(ひんみゃく)の3種類あります。
このなかで危険なのが頻脈です(「心室細動と心房細動は危険な不整脈」参照)。
多くは脈拍が150~200回 / 分にもなり、心臓のポンプ機能が障害されてしまいます。その結果、血圧が下がり、脈が触れにくくなります。
COLUMN心室細動と心房細動は危険な不整脈
頻脈型の不整脈である心室細動、心房細動などが起きると、どのようにして循環に障害が現れるのでしょうか。機序を理解しておきましょう。
心室細動は、刺激伝導系の興奮によって収縮するのではなく、個々の心室筋が無秩序に収縮している状態です。収縮というより震えている状態です。
心室全体としての収縮が行えなくなるため、血液を送り出すというポンプ状態が失われます。心室細動は一種の心停止状態で、除細動器によって緊急に心肺蘇生術を行う必要があります。
心房細動は、心房全体が不規則に収縮する状態です。心房細動が起きると、心房から心室へ十分に血液が拍出されなくなり、全身に循環する血液量が20~25%減少します。また、心房内に血液が淀むため、血栓が形成されやすくなります。血栓が左心室から血流に乗って移動すると、動脈系血管で詰まることがあります。
血栓が脳の血管で詰まった状態を心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)といいます。心臓内でできた血栓は大きく、フィブリンという凝固タンパク質で固められていて溶けにくいため、症状が重症化しがちです。
※編集部注※
当記事は、2016年7月21日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版