動脈に起こる異常にはどんなものがある?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
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今回は「動脈」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
動脈に起こる異常にはどんなものがある?
動脈には常に高い圧がかかっているので、さまざまな異常が起こります。
代表的なものが動脈硬化で、血管壁にアテローム(内部に粥状の内容物を蓄えた固まりで粥腫<じゅくしゅ>といいます)が生じ、血管がプラーク(動脈硬化巣)により狭窄して血流が阻害されます(アテローム動脈硬化、図1)。
図1アテローム動脈硬化
動脈硬化が進行すると、血管が閉塞して血液が全く流れなくなり、心筋梗塞や脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)を発症します。また、血管壁がもろくなることで、脳出血を起こしやすくなります。なお、四肢の血管の動脈硬化が進むと、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)を引き起こします。
動脈瘤(どうみゃくりゅう)も、動脈壁の異常です。動脈の内腔が部分的、あるいは全周的に拡張し、こぶ状になります。血管壁が弱くなるため、動脈瘤が破裂する危険性が高くなります。
動脈瘤には、①動脈の3層構造(内膜、中膜、外膜)を保ったまま局所的に拡張する真性動脈瘤、②血液が内膜の亀裂から中膜に流入する解離性(かいりせい)動脈瘤、③外傷や感染によって動脈壁が壊され、血腫を生じる仮性(偽性)動脈瘤などがあります。
脳にできた動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を引き起こします。
MEMO末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
四肢の血管の動脈硬化によって十分な血流が保てなくなり、歩行時の足の痛み、痺れ、冷感などを感じるようになります。放置すると組織の壊死が起こり、切断に至ることもあります。
※編集部注※
当記事は、2016年6月27日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版