嗅覚、味覚|感覚

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、嗅覚、味覚について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 嗅覚は、におい分子をの嗅覚受容器で感じる。
  • 味覚は、味分子(イオン)を舌の味蕾で感じる。

 

はじめに

嗅覚は、他の特殊感覚と異なり、気体分子が刺激になる。

 

嗅覚の受容器は嗅覚専用としてあるのではなく、鼻腔粘膜上部に嗅部として存在する。この嗅部の上皮細胞に嗅細胞がある。この嗅細胞は双極細胞で、細胞体から両方向に軸索が伸びている。片方の神経線維の先端には嗅毛があり、におい分子を感知する(図1)。

 

もう一方の神経線維の先端は大脳皮質前頭葉下面にある嗅球(きゅうきゅう)を通り、大脳皮質の嗅覚野に達する。

 

図1嗅細胞

嗅細胞

 

(増田敦子:身体のしくみとはたらき.p.154、サイオ出版、2015)

 

嗅覚受容器がGタンパク質共役型(代謝調節型)受容体の一種であることを明らかにし、その遺伝子を同定したリチャード・アクセル(アメリカ1946~)とリンダ・バック(アメリカ1947~)は2004年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 

味覚の受容器は、嗅覚の場合と同様、味覚専用としてあるのではなく、舌にある。

 

舌の表面には舌乳頭とよばれる構造があり、味覚の受容器である味蕾(みらい)がある。味蕾も双極細胞の形をしていて、片方の神経線維の先端には味毛があり、味分子(イオンもある)を感知する。もう一方の神経線維の先端は味覚神経線維として大脳皮質の味覚野に達する。舌には、味蕾が多数存在する部位があり、いずれの味に対しても感受性が高い(図2)。

 

図2味蕾の構造

味蕾の構造

 

 

においと記憶

においをかいだとき連想して何か思い出すことがある。これは嗅球が記憶に関係する海馬の近くにあるからである。

 

アロマセラピー

グレープフルーツなどの香りには、脂肪分解、熱産生および異化の亢進を起こすなどの交感神経興奮作用がある。ラベンダーなどの香りには、消化作用の促進および同化の亢進を起こすなどの副交感神経興奮作用があることが知られている。

 

香りを用いてストレスを解消したり心身をリラックスさせたりすることをアロマセラピー aromatherapy という。

 

味覚と亜鉛

高齢になると味が分かりにくくなるということがある。その原因のなかに亜鉛の欠乏によるものがある。亜鉛が欠乏すると味蕾の細胞が減少すると考えられている。

 

亜鉛は緑茶、抹茶、ごま、魚介類、海草、豆類など高齢者が好む食品に多いのでバランスのよい食事をしていれば、特に欠乏することはない。味覚の減退には、高齢に伴う唾液の分泌低下も関係している。

 

NursingEye

アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳腫瘍、アルコール中毒、てんかん統合失調症などで嗅覚情報の処理が正常に行えず、嗅覚減退、嗅覚過敏、嗅覚錯誤などを起こすことがある。

 

上記の疾患で同様に、味覚減退、味覚過敏、味覚錯誤などを起こすことがある。

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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