皮膚感覚|感覚
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、皮膚感覚について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 皮膚には触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の受容器がある。
- それぞれの受容器には順応速度の違いと感覚点の数の違いがある。
皮膚について
皮膚は外界からの刺激を真っ先に受けるところである。そのため皮膚には表1のようにさまざまな感覚の受容器がある。表では皮膚1cm2あたりの数は体表面積を1.7m2として計算してある。
自由神経終末
痛みを感じる受容器である自由神経終末 free nerve ending は侵害受容器 nociceptor ともよばれる。
自由神経終末は、強い圧迫などの機械的刺激のみに応じる機械的侵害受容器と、すべての侵害刺激(機械的、化学的、熱的)に応じるポリモーダル侵害受容器がある。多くの刺激モードに応じることからポリモーダル olymodal という。
ガッサー Gasser の分類(『感覚の種類』表2参照)では、前者はAδ線維、後者はC線維に属する。
自由神経終末はAδ線維、C線維などの痛覚神経の先端にあり、皮下に多く分布する。皮膚、皮下組織、筋肉の腱や靱帯、骨膜(骨を覆っている膜)、筋膜(筋肉を覆っている膜)、神経を覆う膜、椎間板の一部(正確には線維輪の外側2層まで)に存在していて、それらに異常が生じた場合に危険信号として脳へと痛みを伝える。
順応速度
順応とはある刺激に慣れることで、順応速度が速いということはその刺激にすぐ慣れて感じにくくなること、順応速度が遅いということはその刺激になかなか慣れずに敏感な状態が続くということである。生体にとって危険な刺激に対する感覚ほど順応は遅い(敏感な状態が続く)と考えてよい。
痛覚は生体にとって最も危険な刺激の情報を伝えるので、順応が無限に遅い(順応しない)感覚である。感覚点の数も生体にとって危険な刺激に対する感覚ほど多い。温覚よりも冷覚のほうが順応が遅く、感覚点の数も多いことから、生体にとって温刺激よりも冷刺激のほうが危険であることが分かる。
2点弁別閾
図2のようにノギスの→部分の間の長さを徐々に狭めていき、→部分の両方を同時に上腕部の皮膚に接触させる。被験者が2点と感じられる最小距離をノギスの読みから記録して2点弁別閾(べんべついき)とする。手掌部、手背部、示指先端、肩甲上部、項部、前額部、ふくらはぎなど測定する部位によって2点弁別閾が異なることが分かる。
狭めていって2点弁別閾に近づいたときは、→部分の両方を皮膚に接触させること、片方だけを接触させることをランダムに行うと誤差が入りにくい。最近はデジタルノギスがあり、正確な距離が数字で出るので便利である。2点弁別閾が小さいほど皮膚の触覚受容器が密に分布していて敏感であることを示している。ノギスを皮膚に当てて測定する2点弁別を「静的識別」、指を動かして測定する2点弁別を「動的識別」という。後者の値は2mmが正常とされている。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版