筋感覚|感覚
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、筋感覚について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 筋の受容器には筋紡錘と腱器官がある。
- 2. 筋紡錘は筋の伸展を感知するために錘外筋線維に対して並列になっている。
- 3. 腱器官は筋の張力を感知するために、バネばかりのように錘外筋線維に対して直列になっている。
筋受容器とは
筋の受容器には表1のような2種類がある。
表1筋の受容器
α-γ連関
図1のように筋におもりを付けて伸ばす(筋が伸展する)と筋紡錘がそれを感知して活動電位を発生させる。
図1筋のα-γ連関
(神野耕太郎:運動の生理学.南山堂、2003より改変)
図1のようにα運動ニューロンの刺激で錘外筋線維(一般的に筋とよばれる部分)を収縮させると錘外筋線維に対して並列に配置されている筋紡錘はたるむ。たるんでしまうと筋の伸展を感知することができないので、筋紡錘を収縮させるγ運動ニューロンをα運動ニューロンに同期させて働かせることにより、筋紡錘を常にピンと張った状態にしておく(図1)。
これをα - γ連関とよび、筋紡錘の感度を落とさないために必要である。このα - γ連関のおかげで我々は直立姿勢を保つことができる。
筋紡錘
筋紡錘(muscle spindle)の錘は、訓読みでは「つむ」である。糸を紡ぐとき棒を回転させながら糸を巻くと円柱の両端を細くしたような形になる。それが紡錘形である。
梶井基次郎の小説「檸檬」のなかでは、レモンのことが「丈の詰まった紡錘形の恰好」と書かれている。「すい」と読む2つの漢字、錐体路の「錐」(「錐とは」参照)と筋紡錘の「錘」の書き間違いに注意しなければならない。
筋紡錘は錘内筋線維ともよばれ、筋力を出す錘外筋線維(いわゆる骨格筋)と平行になっているが、大きさははるかに小さい。錘外筋線維は長いものでは30cm にもなるが、筋紡錘は1cm 程度である。筋紡錘は錘外筋線維の伸張を感知するセンサーであるが、その大きさから錘外筋線維全体の伸びを感知しているのではないことが分かる。
筋紡錘は各骨格筋の運動制御に必要な部分(一般には中心部分)に存在する。筋紡錘には100個もの核が集まった核袋線維(bag fibers)と核が鎖状に並んだ核鎖線維(chain fibers)がある。
筋紡錘からの求心性線維はIaであり、核袋線維および核鎖線維の両方から筋伸張の情報を脊髄に送っている。核鎖線維にはこのほかにロイド(Lloyd)の分類(「神経線維の分類」参照)でIIに分類される求心性神経がある。骨格筋が大きく伸張されたときIaの感度が一過性に落ちるが、そのときIIの感度は低下せず、Iaを補っていると考えられる。
筋紡錘は繊細な動きをする筋(手の虫様筋など)に多い。例えば、ヒトの場合、筋1gあたりで比較すると、手の虫様筋には足のヒラメ筋や腓腹筋の数十倍の筋紡錘がある。密度でなく、絶対数でみると筋の重量が大きいほど筋紡錘の数が多い。
脳神経で支配される筋や横隔膜には筋紡錘がないとされているが、それはこれらの筋が過剰に伸張される危険が少ないことを反映していると考えられる。
※編集部注※
当記事は、2017年6月2日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版