最終更新日 2018/02/21

横隔膜

横隔膜とは・・・

横隔膜(おうかくまく、thoracic diaphragm)は、胸腔と腹腔との境界にある膜状筋のことで、呼吸において重要な役割を担う。

 

起始部は腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部からなる。それぞれの部から出る筋束は、全体としてドーム状(円蓋状)に胸腔に向かって盛り上がっている。その中央部は腱中心と呼ばれる腱膜によって構成される部位であり、横隔膜の停止部である。

 

横隔膜の上面は、胸内筋膜と胸膜、下面は腹横筋膜と腹膜により覆われている。横隔膜には大動脈裂孔、大静脈孔、食道裂孔があり、それぞれ下行大動脈、下大静脈、食道が通っている。

 

吸気により横隔膜が収縮すると足側へ下降する。それにより胸腔が拡張するため、下気道へ空気が流入し、肺が拡張する。

 

 

支配する神経は横隔神経で、おもにC4の頚神経と、C3、C5の補助枝からなる。そのため、C4より上位の頸髄損傷により、換気量の低下が起こる。なお、Wicks らの報告によると、C1、C2の損傷ではそれぞれ85%、72%の患者で長期人工呼吸管理が必要であったが、C3損傷では40%、C4~5の損傷では15%未満であった。

 

横隔膜へは、内胸動脈由来の心膜横隔動脈と筋横隔動脈、胸部大動脈由来の上横隔動脈、肋間動脈が上方から、下横隔動脈が下方から血流を供給する。

 

横隔膜が関与する疾患として、先天性横隔膜ヘルニア、後天性横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症、横隔神経麻痺、横隔膜腫瘍、石綿関連疾患などがある。

執筆: 瀬尾龍太郎

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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