黄疸・胆石
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、黄疸について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
黄疸とは
胆汁(bile)には肝臓胆汁(liver bile)と胆嚢胆汁(gallbladder bile)がある。肝臓から分泌された肝臓胆汁が、胆嚢(gallbladder)で1/6~1/10に濃縮されたものが胆嚢胆汁である。胆汁の主成分は胆汁酸(bile acid)と胆汁色素(bile pigment)である。胆汁酸は脂質の消化に不可欠な成分である。
胆汁色素はヘム(heme)が分解されたビリルビン(bilirubin)である。血漿ビリルビン濃度が2~3mg/dL以上になると肉眼的に黄疸(jaundice)が認められる。胆汁色素は消化には関与しないが、活性酸素(active oxygen)に対する防御作用がある。胆汁色素は腸内細菌により還元されてウロビリノーゲン(urobilinogen)に変化し、これが尿や糞便の色になる。
新生児が21%という高濃度の空気中の酸素を自分の肺で吸入すると酸化障害を受けやすい。新生児でビリルビンが増えるのはこの酸化障害に対する防御作用でもあり、新生児黄疸(neonatal jaundice)は生理的黄疸(physiological jaundice)ともいう。新生児黄疸ではピーク時の総ビリルビン値が10~15mg/dLになることがある。アルブミン(albumin)と結合しているビリルビン(間接ビリルビン indirect bilirubin)が大脳基底核(basal ganglia)などに蓄積する核黄疸(kernicterus)には注意しなければならない。
血漿中のビリルビンの約95%は間接ビリルビンで、アルブミンと結合していないビリルビンを直接ビリルビン(direct bilirubin)という。直接ビリルビンは抱合ビリルビン(conjugated bilirubin)に、間接ビリルビンは、非抱合ビリルビン(unconjugated bilirubin)にそれぞれ相当する。
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ビリルビンは、自身が酸化されてビリベルジン(biliverdin)に戻ることにより細胞が酸化されることを防いでいる。biliverdinのverdにはフランス語で緑色という意味がある。乳児の緑便(green stool)はビリベルジンの色で、ビリルビンが生体を守ってくれている証拠である(図1)。
図1ヘモグロビンの分解
胆石
図2のように、胆汁酸、コレステロールおよびレシチンの比率がある範囲に入ると胆石(gallstone)が形成される。
図2胆石ができる条件
胆汁酸とレシチンの濃度が高いほどコレステロールがミセルとして存在して、胆石ができない(図のA、B、Cで囲まれた部分)。
それ以外の部分ではコレステロールが結晶として析出する。これが胆石である。一般に胆汁酸とレシチンの濃度が低く、コレステロールの濃度が高い場合ほど胆石が形成されやすい。胆石症(cholelithiasis)のなかで最も頻度が高いのがコレステロールの過剰に起因するコレステロール胆石(cholesterol gallstone)である。
オッディの括約筋
総胆管(common bile duct)と膵管(pancreatic duct)が、Y字型に十二指腸へ開口する出口にオッディの括約筋(Oddi sphincter)がある。通常、オッディの括約筋は閉じていて迷走神経(vagus nerve)およびコレシストキニン〔cholecystokinin〕(CCK)の刺激で開いて、胆汁および膵液が十二指腸に分泌される。
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急性膵炎(acute pancreatitis)の主な原因は過剰な飲酒である。これはアルコールにオッディの括約筋を閉じる作用があり、膵液(膵酵素)が膵臓内に逆流して炎症を起こすからである。膵酵素阻害薬を膵臓の動脈に注入する治療法が行われている。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版