大腸の働きと排便・便秘
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、大腸の働きについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
大腸の構造と役割
大腸は盲腸(cecum)、結腸(colen)および直腸(rectum)に区分され、長さは約1.5m、太さは約6cmである。結腸は、上行、横行、下行およびS状結腸に区分される。
大腸には消化酵素はなく、水分の吸収が主な生理作用である。大腸には腸内細菌が非常に多く、そのなかには生命維持に欠かせない重要な物質をつくってくれている細菌もいる。例えば、血液凝固因子のプロトロンビン類が肝臓で生合成されるときに必要なビタミンKは腸内細菌がつくってくれる。また、ビフィズス菌(Lactobacillus bifidus)は大腸内の環境を弱酸性に保ち、ウェルシュ菌(Bacillus welchii)のような悪い菌の増殖を防いでいる。
食物繊維やフラクトオリゴ糖のように小腸で消化吸収されない糖質を難消化性糖質という。
グルコースとフルクトースからなる二糖類(disaccharide)のショ糖(sucrose)は消化性糖質であるが、グルコースにフルクトースが2個以上付いたものはフラクトオリゴ糖と総称され、難消化性糖質である。消化性糖質と難消化性糖質を比較すると表1のようになる。
難消化性デンプン(レジスタント・スターチ resistant starch)も、難消化性糖質の範疇に入る。
排便反射
排便反射(defecation reflex)の受容器、求心性神経、中枢、遠心性神経および効果器は表2のようになる。
表2排便反射
排便反射に加えて、便意(desire for defecation)とともに、随意筋である外肛門括約筋(external anal sphincter)を弛緩させて排便を行う。
便秘
健康成人では、1日に1~2回起こる排便が3~4日以上ない状態を便秘(constipation)という。慢性的な便秘は、弛緩性便秘、痙攣性便秘に分類される(表3)。
NursingEye
大腸で起こり、便意を感じる強力な蠕動を大蠕動(mass peristalsis)という。小腸の蠕動と異なり、大蠕動は1日に1、2回しか起こらない。朝食後に起こることが多い。このとき排便を我慢してしまうと次の大蠕動までの間に大腸内で水分の吸収が進み、便が硬くなり便秘になりやすい。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版