三大栄養素の基本的構造|栄養と代謝
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、三大栄養素の基本的構造について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 栄養素には、糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素と、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素がある。
- 2. 食事で摂取する主な糖質はデンプンで、グリコシド結合で数千個のグルコースが結合した化合物である。
- 3. 食事で摂取する脂質の大部分は中性脂肪で、エステル結合で脂肪酸3分子とグリセリン1分子が結合した化合物である。
- 4. タンパク質は、ペプチド結合でアミノ酸が約40個以上結合した化合物である(10個のアミノ酸でもタンパク質固有の立体構造をとりうることが報告された。Honda S et al.Crystal structure of a ten-amino acid protein. J Am Chem Soc 2008; 130(46), 15327‒31)。
栄養素
栄養素(nutrient)とは、
①生命維持に必要な物質をつくるための原料となるもの
②それらの物質の代謝および合成反応を進めるために必要であるが生体内ではつくれないもの
をいう。
①には糖質(sugar)、脂質(lipid)およびタンパク質(protein)があり、これらを三大栄養素という。
②は、ビタミン(vitamin)および、ミネラル(mineral)などの微量栄養素である。
糖質
糖質は炭水化物(carbohydrate)ともよばれ、Cn(H2O)mという化学式で表される。糖質が生体内で酸化(代謝)されることでエネルギーが産生され、最終的にはCO2とH2Oに分解される。
食事で摂取される糖質の代表的なものはデンプン(starch)である。
デンプンは植物の貯蔵糖質で、グルコース(ブドウ糖、単糖類)が数千個つながってできている(ヒトを含む動物の貯蔵糖質はグリコーゲン〔glycogen〕)。
デンプンは、α1 → 4グリコシド結合(glycosidic linkage)でグルコースが結合した直鎖成分のアミロース amylose(約20~25%)と、α1 → 6グリコシド結合でグルコースが結合した分枝成分のアミロペクチン (amylopectin、約75~80%)とで構成される(もち米の場合は、アミロペクチンがほとんどを占める、図1)。
図1糖質の基本構造
脂質
生体内にある脂質は、単純脂質(simple lipids)、複合脂質(compound lipids)および誘導脂質(derived lipids)に分類される。
単純脂質には、中性脂肪(neutral fat)やコレステロールエステル(cholesterol ester、コレステロールと脂肪酸がエステル結合したもので、血中で大部分のコレステロールはこの形で存在する)などがある。
中性脂肪はトリグリセリド(triglyceride)ともよばれ、エステル結合で脂肪酸3分子とグリセリン1分子が結合した化合物である(図2)。
図2脂質の基本構造
複合脂質には、細胞膜(plasma membrane)の主要な構成要素であるリン脂質(phospholipid)があり、誘導脂質には、遊離脂肪酸(free fatty acid)、遊離コレステロール(free cholesterol)などがある。
タンパク質
ペプチド結合(peptide bond)でつながるアミノ酸(amino acid)の数がおよそ40以上の場合をタンパク質(図3)、それ以下の場合をポリペプチド(polypeptide)とよぶが、その境界は厳密なものではない(副腎皮質刺激ホルモン〔adrenocorticotropic hormone、ACTH〕は、アミノ酸39個からなり、通常、タンパク質でなくポリペプチドとよばれている)。
図3タンパク質の基本構造
アミノ酸の数が10個程度以下の場合は、オリゴペプチド(oligopeptide) とよぶ。
タンパク質の構造には1次構造から4次構造まである。1次構造(primary structure)はアミノ酸配列順序 (amino acid sequence)を表したもので、RNAの塩基配列の3つの組(コドン〔codon〕)でアミノ酸の種類が決まる。
2次構造(secondary structure)はポリペプチド鎖間あるいは鎖内の水素結合による立体配置を示したもので、代表的なものにα-ヘリックス(α -helix)構造やβ構造がある。3次構造(tertiary structure)はタンパク質の立体構造を表したもので、自由エネルギーが最小となる構造をとる。
4次構造(quartery structre)はポリペプチド鎖間の相互作用を示したもので、代表的なものにヘモグロビンのアロステリック効果(allosteric effect、本来の酵素タンパク質の構造とは異質の物質が、アロステリックな部位〔=活性部位ではない部位〕と結合し、生理機能に影響を与える現象)などがある。
※編集部注※
当記事は、2016年10月16日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版