異化と同化|栄養と代謝
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、異化と同化について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 栄養素(高分子化合物)は、分子内に多数の化学結合、すなわち化学エネルギーをもつ高エネルギー化合物である。
- 栄養素は還元状態にある。
- 栄養素をCO2、H2Oなどの低分子化合物に分解する反応を異化反応といい、これは酸化反応である。
- 生体は、異化反応の過程で栄養素の化学エネルギーをATPに変換して獲得する。
- CO2やH2Oから栄養素を生合成する反応を同化反応という。
異化と同化
栄養素(高分子化合物)を消化・代謝してCO2やH2Oなど(低分子化合物)に分解する反応を異化反応(catabolic reaction)、低分子化合物から高分子化合物を合成する反応を同化反応(anabolic reaction)という。
栄養素は高い還元状態、CO2、H2Oなどは高い酸化状態にあるので、異化反応は酸化反応、同化反応は還元反応とみることもできる。
異化反応(代謝)とは
生体が高分子化合物を低分子化合物に分解する反応が異化反応、すなわち代謝(metabolism)である。
通常、ヒトが摂取する栄養素は、デンプン、中性脂肪、タンパク質など、分子内に多数の化学結合をもつ高分子化合物である。これらの化合結合の大部分はC-H、C-N結合で、栄養素は還元状態が高い化合物ともいえる。
代謝(異化反応)とは、還元状態にある栄養素を酸化・分解することにより、結合エネルギーをATP(adenosine triphosphate)に変換する(=生命維持・活動に必要なエネルギーを得る)ことである。
同化反応(生合成)とは
生体が低分子化合物から高分子化合物を合成する反応が同化反応、すなわち生合成(biosynthsis)である。
同化作用としては、植物が太陽光のエネルギーでCO2とH2Oからデンプンを合成する炭酸同化作用(carbon dioxide assimilation reaction)がよく知られている。
動物は葉緑体(choloroplast)をもたないのでCO2とH2Oからデンプンを合成することはできないが、グルコースからグリコーゲンを合成できる。アミノ酸からタンパク質を生合成する反応も同化反応である。
[次回]
解糖系と糖新生|栄養と代謝
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版