異化と同化|栄養と代謝

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

三大栄養素の基本的構造|栄養と代謝

 

今回は、異化と同化について解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

1. 栄養素(高分子化合物)は、分子内に多数の化学結合、すなわち化学エネルギーをもつ高エネルギー化合物である。
2. 栄養素は還元状態にある。
3. 栄養素をCO2、H2Oなどの低分子化合物に分解する反応を異化反応といい、これは酸化反応である。
4. 生体は、異化反応の過程で栄養素の化学エネルギーをATPに変換して獲得する。
5. CO2や H2Oから栄養素を生合成する反応を同化反応という。

 

異化と同化

栄養素(高分子化合物)を消化・代謝してCO2やH2Oなど(低分子化合物)に分解する反応を異化反応(anabolic reaction)、低分子化合物から高分子化合物を合成する反応を同化反応(catabolic reaction)という(図1)。

 

栄養素は高い還元状態、CO2、H2Oなどは高い酸化状態にあるので、異化反応は酸化反応、同化反応は還元反応とみることもできる。

 

図1異化と同化

異化と同化

 

異化反応(代謝)とは

生体が高分子化合物を低分子化合物に分解する反応が異化反応、すなわち代謝(metabolism)である。

 

通常、ヒトが摂取する栄養素は、デンプン中性脂肪タンパク質など、分子内に多数の化学結合をもつ高分子化合物である。これらの化合結合の大部分はC-H、C-N結合で、栄養素は還元状態が高い化合物ともいえる。

 

代謝(異化反応)とは、還元状態にある栄養素を酸化・分解することにより、結合エネルギーをATP(adenosine triphosphate)に変換する(=生命維持・活動に必要なエネルギーを得る)ことである。

 

同化反応(生合成)とは

生体が低分子化合物から高分子化合物を合成する反応が同化反応、すなわち生合成(biosynthsis)である。

 

同化作用としては、植物が太陽光のエネルギーでCO2とH2Oからデンプンを合成する炭酸同化作用(carbon dioxide assimilation reaction)がよく知られている。

 

動物は葉緑体(choloroplast)をもたないのでCO2とH2O からデンプンを合成することはできないが、グルコースからグリコーゲンを合成できる。アミノ酸からタンパク質を生合成する反応も同化反応である。

 

動物の貯蔵糖質であるグリコーゲンは骨格筋に約200g、肝臓に約100g蓄えられている。グリコーゲンは、グルコース-6-リン酸まで分解されて解糖系に入る。肝臓にはグルコース-6-リン酸を脱リン酸化してグルコースに戻す酵素(glucose-6-phosphatase)があり、生成したグルコースを血中に出して血糖を維持する。骨格筋にはこの酵素がないので、骨格筋のグリコーゲンは骨格筋の中でのみ使われる。

 

※編集部注※

当記事は、2016年10月21日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

解糖系と糖新生|栄養と代謝

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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