中枢神経系|神経系の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、中枢神経系について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
脳の構造と機能
中枢神経系は、脳と脊髄に大別される。脳は機能的には、大脳(終脳)、脳幹(間脳、延髄、橋、中脳)、小脳に区分され、それらは頭蓋骨に納められている。
人間では大脳が大きく発達し脳の大部分を占め、脳幹のほとんどを覆っている。脳幹部は脊髄の上部にあり、脊髄と広範な連絡をしている。成人の脳の重さは約1.3kgもあり、身体のなかでは最も重い臓器である。脳の神経細胞は約140億個もあるといわれている。
大脳半球の構造
大脳は大脳縦裂で左右の大脳半球に分けられており、左右の大脳半球は大脳溝により前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられている(図1)。
この名称は、それぞれを覆う頭蓋骨の名称にちなんでいる。それぞれの部位は異なる機能を分担している(機能の局在)。それぞれの半球は、外側を取り囲む外套がいとう(灰白質、白質)と、その深部にある大脳核(大脳基底核)、嗅脳の3つの部分からなる。
灰白質(大脳皮質)は、大脳半球の表面の神経細胞体が集まっている部分で、灰色にみえるのでこの名称がつけられた(図2)。
大脳皮質は、回とよばれる盛り上がった部分と深い溝でできた裂(溝ともいわれる)が入りくみ、表面積を大きくしているため多数の神経細胞を入れることができる。
白質(大脳髄質)は、灰白質より深部にあり、神経線維が多数集まっている部分で白く見える。灰白質の大部分は表面にあるが、大脳の深部の白質部にも島のような型で灰白質が埋め込まれている。この部分を大脳基底核とよぶ。
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大脳基底核は、随意運動の調節に関係しており、運動に際して筋緊張のバランスをとるように働いている。この部分に障害があると歩行やスムーズな運動が困難になる。
このような疾患にハンチントン舞踏病やパーキンソン症候群がある。ハンチントン舞踏病は、踊っているような、不規則な不随意の多動がみられる。パーキンソン症候群は、大脳基底核での神経伝達物質ドーパミン濃度が不足して起こると考えられている。
新皮質と旧皮質
大脳皮質は、部位により構造上の違いがあり、その働きも異なっている。
大脳辺縁系の機能
古皮質(梨状回、海馬)と旧皮質(帯状回、海馬回)に基底核の一部を含む領域は大脳辺縁系とよばれ、本能や情動に関係している。古皮質は、個体維持や種族保存(性欲)に関係しており、本能に基づく情動行動(怒りや恐怖等)や自律機能に重要な役割を果たしている。
この部分は人間も動物も共通した機能であるが、下等動物ほどこの部分を占める割合は大きくなる。一方、新皮質は記憶や知能などの高度精神機能を営んでおり、人間ではこの部分が大きな面積を占める。爬虫類などでは大脳半球の大部分を大脳辺縁系が占めている(図3)。
(堺章:新訂目でみるからだのメカニズム.p.147、医学書院、2000より改変)
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版