中枢神経系|神経系の機能

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

神経情報の伝達のしくみ(2)

 

今回は、中枢神経系について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. 中枢神経系は、脳と脊髄に分けられる。
  • 2. 脳は、機能的に大脳(終脳)、脳幹(間脳、中脳、橋、延髄)、小脳に分けられる。間脳は、視床と視床下部に分けられる。
  • 3. 大脳は、大脳縦列によって左右の大脳半球に分けられる。大脳半球は脳溝により前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの葉に分けられる。
  • 4. 大脳半球の表面には細胞体が集まり(灰白質)、深部には神経線維が集まっている(白質)。しかし、深部にも細胞体がある。その部分を大脳基底核という。
  • 5. 大脳辺縁系は動物と人間に共通した部分で本能に基づく情動行動や自律機能を営む。

 

〈目次〉

 

脳の構造と機能

中枢神経系は、脊髄に大別される。脳は機能的には、大脳、脳幹(間脳、中脳、延髄)、小脳に区分され、頭蓋骨に納められている。

 

人間では大脳が大きく発達し脳の大部分を占め、脳幹のほとんどを覆っている。脳幹部は脊髄の上部にあり、脊髄と広範な連絡をしている。成人の脳の重さは約1.3kg(体重の約2%)で、身体のなかでは最も重い臓器である。脳の神経細胞は約140億個ある。

 

大脳半球の構造

大脳は大脳縦裂で左右の大脳半球に分けられ、左右の大脳半球は脳溝により前頭葉頭頂葉側頭葉後頭葉に分けられる(図1)。

 

図1脳の左側外観

脳の左側外観

 

各部位は異なる機能を分担している(機能の局在)。各半球は、外側を取り囲む外套(がいとう、灰白質、白質)と、その深部にある大脳(大脳基底核)、嗅脳の3つの部分からなる。

 

灰白質大脳皮質)は、細胞体が大脳半球の表面に集まっている部分で、灰色にみえる(図2)。

 

図2灰白質と白質

灰白質と白質

 

大脳皮質は、回とよばれる盛り上がった部分と深い溝(脳溝)が入りくみ、表面積を大きくしているため多数の神経細胞を入れることができる。

 

白質大脳髄質)は、灰白質より深部にあり、神経線維が多数集まっている部分で白く見える。灰白質の大部分は表面にあるが、大脳の深部の白質部にも島のような型で灰白質が埋め込まれている。この部分を大脳基底核とよぶ。

 

NursingEye

大脳基底核は、随意運動の調節に関係し、運動に際して筋緊張のバランスをとる。この部分の障害で歩行やスムーズな運動が困難になる。

 

このような症状をきたす代表的な疾患にハンチントン病やパーキンソン病がある。ハンチントン病は、踊っているような、不規則な不随意の多動がみられる。パーキンソン病は、大脳基底核での神経伝達物質ドーパミン不足が病因と考えられている。パーキンソン病の有病率は10万人あたり100~150人であり、神経変性疾患の中ではアルツハイマー病に次いで頻度が高い。

 

また、パーキンソン病とは別の原因でパーキンソン病のような症状(パーキンソニズム:左右差のある安静時振戦・車様筋強剛・運動緩慢・姿勢保持障害)がみられる疾患がパーキンソン症候群である。

 

その原因は、抗精神病薬、多発性脳梗塞、多系統萎縮症など多岐にわたる。ハンチントン病は常染色体優性(顕性)遺伝で、30~50歳に好発する。不随意運動で発症した後、10~20年で感染症や嚥下障害による窒息で死亡することが多い。

 

新皮質と旧皮質

大脳皮質は、部位により構造上の違いがあり、その働きも異なっている。

 

 

大脳辺縁系の機能

古皮質(梨状回、海馬)と旧皮質(帯状回、海馬回)に基底核の一部を含む領域は大脳辺縁系とよばれ、本能や情動に関係している。古皮質は、個体維持や種族保存(性欲)に関係しており、本能に基づく情動行動(怒り恐怖等)や自律機能に重要な役割を果たす。

 

この部分は人間も動物も共通した機能であるが、下等動物ほど、この部分が占める割合が大きい。一方、新皮質は記憶や知能などの高度精神機能を営んでおり、人間ではこの部分が大きな面積を占める。爬虫類などでは大脳半球の大部分を大脳辺縁系が占める(図3)。

 

図3大脳皮質(新皮質と辺縁系)

大脳皮質(新皮質と辺縁系)

 

(今井昭一:薬理学.標準看護学講座5、金原出版、1998より改変)

 

※編集部注※

当記事は、2016年4月28日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

大脳皮質の機能

 

⇒〔ワンポイント生理学一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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