血液ガス採血による電解質管理|ICU における心臓血管外科患者の看護

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「血液ガス採血による電解質管理」について解説します。

 

木村満美子
市立青梅総合医療センター 看護師

黒木秀仁
市立青梅総合医療センター 看護師

 

 

 

Key point
  • 患者観察の環境が整えられ、心臓血管外科患者の術後の特徴を理解し術後看護にあたることができる。

 

 

血液ガス採血による電解質管理の目的

血液ガス採血を行い、指示簿に従い適切な輸液管理を行うことができる。

 

 

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各種電解質の特徴

カリウム(K)

心筋保護液の影響もあり、術直後はK放出時期となる。

 

利尿剤の使用などで低めとなることはあるが、回収血などの影響でKが補われる場合もある。

 

K値が変動している原因をアセスメントする必要がある。

 

カリウム血症では、徐脈・心室細動が起こりやすく、低カリウム血症では、心房性・心室性期外収縮が発生しやすい。

 

 

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血糖(BS)

人工心肺回路に充填されているブドウ糖液、手術侵襲によるインスリンの分泌抑制により高血糖になりやすい。

 

カテコラミンは、インスリン分泌抑制作用があり心臓血管外科術後患者は高血糖になりやすい傾向にある。

 

高血糖状態の心臓では、エネルギー源である糖分が枯渇し、心毒性のある遊離脂肪酸が増え、その結果、心機能が低下する可能性がある。

 

血糖値が200mg/dL以上が持続すると、白血球貪食能・好中球と単球の接着・殺菌などのさまざまな機能が障害されるとされている。

 

創治癒の遷延や縦隔炎のリスクが高まるため、術直後より血糖管理を行う必要がある。

 

 

ベースエクセス(BE)

術後は、末梢血管収縮により末梢循環不全になるため、嫌気性代謝が主なエネルギー代謝となり、その結果、乳酸アシドーシスに傾く。

 

そのため、術後輸液は乳酸リンゲル液を基本として、必要時、メイロン(炭酸水素ナトリウム)などで補正する必要がある。

 

アシドーシスが進行した状態ではカテコラミン効果が減弱するため、カテコラミンサポートが必要な術直後においては、BEの補正が重要である。

 

 

カルシウム(Ca)

指示には記載されていないが、心拍出量に大きく影響している。

 

とくに新鮮凍結血漿(FFP:fresh frozen plasma)輸血の投与などにより、クエン酸結合にてCaが低下することがある。

 

Caが低下すると、心拍出量の低下につながる恐れがある。

 

グルコン酸カルシウム(カルチコール)の静脈内投与(I.V.)などで、Caを補正していく必要がある。

 

 

血液ガス採血による電解質管理の方法

人工呼吸器設定を変更した場合には、1時間後に再検を行う。また、吸引後は15分以上あけて採血する。

 

BEは、補正を初めてから、血液ガス採血を行うごとに値をチェックし正常になるまで、補正を繰り返す。

 

血液ガスの結果(K、BS、BE)が指示にかかる場合、指示に基づき点滴の開始や変更を行うのは、帰室直後、帰室後2時間、以降2時間ごととし、比較は2時間前のものと行う(奇数時間か偶数時間にあわせて行う)。

 

 

留意点

血液透析患者では、K値・BE値は指示どおり薬剤投与をするのか医師に確認する必要がある。

 

 

報告

基本的に、2時間おきに電解質(K、BS、BE)を血液ガスで確認して変更するが、著明な電解質異常が認められた場合には、医師にその都度、報告し指示を仰ぐ必要がある。
 

 

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引用・参考文献 閉じる

1 ) 窪田敬一編著:全科ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド.照林社,2015,p77~80

2 ) 循環器看護師の学習帳⇒ Next - Nursing Innovations -「術後管理 帰室直後」・「術後 疾患別のポイント」・「モニタリング 血液ガス」

3 ) 真鍋晋:心臓手術後の血糖管理,帝京大学第8回CVSセミナー


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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