術後患者の呼吸管理|ICU における心臓血管外科患者の看護
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「術後患者の呼吸管理」について解説します。
木村満美子
市立青梅総合医療センター 看護師
黒木秀仁
市立青梅総合医療センター 看護師
- 患者観察の環境が整えられ、心臓血管外科患者の術後の特徴を理解し術後看護にあたることができる。
術後患者の呼吸管理の目的
適切な呼吸管理を行い、早期抜管と肺合併症の予防ができ、術後の呼吸状態の安定化を図ることができる。
術後患者の呼吸管理の方法
人工呼吸器装着中の管理
1気管内吸引
気管内吸引は、必ず循環動態が安定してから開始する。
ドレーンからの出血量が多い場合や血圧が低値である場合には、循環動態をみながら吸引を行う。
胸腔内圧の上昇により血圧の低下を生じることがあるため、血圧やSpO2値、ビジランスモニターの値を見ながら注意して行う。
2人工呼吸器設定変更
指示簿の指示に従い、電解質管理と同様に2時間おきに評価し患者状態や抜管の目安の時間などを考慮して、酸素濃度(FIO2)や呼吸回数を変更する。
人工呼吸器設定変更後は、1時間後に血液ガス採血を行い評価する(医師が人工呼吸器設定を行った場合も同様である)。
吸引を施行した場合には、15分以上空けてから血液ガス採血を行う。
医師よりウィーニング開始指示が出たら指示に従い、人工呼吸器設定を変更していき抜管に向けて準備する。
抜管の介助
必要物品
- 酸素流量計
- ジャクソンリース
- 不織布ガーゼを水で湿らせたもの
- ポリ袋
- 10mLシリンジ(カフエア抜き用)
- 酸素マスク
介助手順
1救急カートを準備し再挿管の準備をする。
2医師が患者に、抜管することを説明する。
3必要物品を準備し、ポリ袋、水で湿らせた不織布ガーゼ、10mLシリンジを患者の頭部付近に準備する。
4医師がジャクソンリースで用手換気しながら、看護師が吸引を行う。吸引する順番は気管、口腔内、鼻腔の順で行い、医師が固定テープを剥離しカフエアを抜き、吸引抜管を施行する。
5抜管後、発声を確認し自己喀痰するよう説明する。
抜管後の看護
抜管後は、呼吸訓練装置(トリフローなど)などを行い排痰援助に努める。
抜管後は、血液ガスデータではなく酸素飽和度の値が評価の指標となる。
抜管後も、胃管などさまざまな管が挿入中であるため、患者の状態に応じて安全ベルト解除の可否を検討する。
自己喀痰の喀出が難しい場合には、吸入器(ネブライザー)などを使用して痰を軟化させ、自己喀出しやすいように援助を行う。
吸入器を使用する場合には、エアロゾル発生の危険があるため、適切な感染防御策を行ったうえで使用する。
閉鎖式吸引が基本であるが、痰の貯留により酸素化不良になる場合があるので、呼吸音を聴取しながら、必要時、ジャクソンリースにて用手加圧換気を施行して吸引する。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版
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ICU看護実践マニュアル
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