離乳食早期からの卵摂取で卵アレルギー8割予防|国立成育医療研究センターのチームが報告

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国立成育医療研究センターのチームが報告

離乳食早期からの卵摂取で卵アレルギー8割予防

 

アトピー性皮膚炎を発症した乳児に、生後6カ月から固ゆで卵を少量ずつ与えると、固ゆで卵を与えなかった群と比較して、鶏卵アレルギーの発症を約8割予防できることが分かった。

 

国立成育医療研究センターアレルギー科医長の大矢幸弘氏らによるランダム化比較試験(PETIT試験)の結果で、1歳時点での鶏卵アレルギーの発症率は、「プラセボ群」で38%だったが、「卵摂取群」では8%だった。2016年12月8日のLancet誌電子版に掲載された。

 

末田聡美=日経メディカル

 

国立成育医療研究センターの大矢幸弘氏

「鶏卵アレルギーの発症を予防する方法が見付かった」と話す国立成育医療研究センターの大矢幸弘氏。写真は、12月8日に開かれた同センターでの会見の様子。

 

食物アレルギーの中でも鶏卵アレルギーの頻度は最も高く、国内では医師の指示で3歳児の5.8%が鶏卵摂取を制限しているという報告もある。従来、あまり科学的ではない臨床研究結果を基に、食物アレルギーの原因になりやすい食物は乳児期早期からの摂取は避けるべきだと考えられてきたが、その後の様々な報告から、2008年以降の各国のガイドラインでは、食物アレルギーの原因になりやすい食物を「除去する根拠はない」と示されている。食べ始めを遅らせる指導には根拠がないことが分かり、むしろ、アレルギーの原因になりやすい食物は乳児期早期から食べ始めた方がアレルギーの発症予防につながるのではないか、という説が注目されてきた。

 

既に、ピーナッツアレルギーにおいては、ピーナッツ製品を乳児期から食べさせる介入を行ったランダム化比較試験の結果が2015年に発表され、その後のメタ解析からも乳児期早期からのピーナッツ摂取によるアレルギーの予防効果が確認されている。

 

一方、鶏卵アレルギーにおいては、ここ数年で離乳期早期から鶏卵を摂取させる先行研究が海外で相次いで発表されているが、生卵乾燥粉末を用いた研究ではアナフィラキシーなどの有害事象を起こすケースが多いなど、安全性に問題がある試験デザインが多かった。「離乳食早期から安全に鶏卵を摂取するためにはどのような方法で行うべきかが課題だった」と大矢氏は話す。

 

アトピー性皮膚炎の治療と併行して少量の卵摂取

本試験では、生後4~5カ月の時点でアトピー性皮膚炎と診断されている生後4~6カ月の乳児121人を登録。より少ない人数で介入効果を調べるために、食物アレルギーを高頻度で発症することが分かっている乳児期からのアトピー性皮膚炎の発症者を対象とした。

 

121人を卵群(60人)とプラセボ群(61人)にランダムに割り付け、生後6カ月から12カ月まで介入を実施。卵群では、生後6~8カ月では加熱全卵粉末50mg(ゆで卵全卵0.2g相当)、生後9カ月からは加熱全卵粉末250mg(ゆで卵全卵1.1g相当)と、段階的に量を増やして毎日摂取してもらい、プラセボ群では、同量のカボチャ粉末を毎日摂取してもらった。

 

併せて、両群ともステロイド軟膏と保湿剤により、アトピー性皮膚炎の治療を行った。皮膚組織の損傷した部分から抗原が侵入すると炎症を促進し、アレルギー疾患の発症・増悪を起こすと考えられているため、経口摂取の介入効果に影響がでないよう、湿疹のない状態を保ちながら試験を行った。

 

主要評価項目は、卵アレルギーの発症率。1歳時点で、ゆで卵半分にあたる加熱全卵粉末7g(ゆで卵全卵32g相当)による負荷試験を入院にて実施した。

 

その結果、かぼちゃを食べ続けたプラセボ群(61人)では卵アレルギーの発症率は38%だったのに対し、卵を食べ続けた群(60人)では8%と約8割少なかった。卵群で重篤な副作用はなく、両群で有害事象に差がなかった。当初は200人の登録を目指していたが、中間解析で有意差が出たため登録を終了し、最終的には121人での解析となった。

 

大矢氏は「アトピー性皮膚炎の乳児では、離乳食早期から鶏卵を摂取することで鶏卵アレルギーが予防できることが分かった。本研究では、ごく少量の固ゆで卵粉末から開始したため、安全に試験を実施することができた。少量ずつでも食べ続けることで免疫寛容が誘導されるようになり、徐々に食べられる量の上限が上がっていったのではないか」と分析。今後はさらに大規模な研究を行い、効果と安全性を検証する方針だ。

 

「アトピー性皮膚炎などの湿疹がある乳児では、まずは経皮感作を予防するため皮膚の状態を良くした上で、専門医の下で生後6カ月から鶏卵の摂取を始めてもよいのではないか。一方で、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児では、食物アレルギーを発症するリスクが低いため、そこまで厳密に早い時期から摂取しなくてもよいのかもしれない」と大矢氏は話している。

 

本試験の結果の一部は、2016年10月に5年ぶりに改訂された「食物アレルギー診療ガイドライン」(日本小児アレルギー学会作成)にも紹介されているが、臨床現場での具体的な対応法の記載はない。まだ湿疹を発症してない乳児など、今回の研究対象にならなかった乳児への対応法については今後、日本アレルギー学会と日本小児アレルギー学会が共同で「コンセンサスステートメント」を発表する予定だという。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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