最終更新日 2024/07/22

酸化マグネシウム

酸化マグネシウムとは・・・

酸化マグネシウム(さんかまぐねしうむ、magnesium oxide)は、制酸剤と緩下剤の両方の機能を持つ薬剤である。制酸剤としては、酸を中和することで胃酸の量を減らし、胃の不快感や胸焼けを和らげる効果がある。緩下剤としての特徴は、非刺激性である点である。酸化マグネシウムは、腸内で水分を保持し、便の量を増やすことで、腸の動きを促進する。これにより、便秘の緩和や排便をしやすくする。

 

酸化マグネシウムは、その穏やかな作用のため、腹痛や腸の過敏反応を引き起こしにくいという利点がある。ただし、過剰に使用すると下痢を引き起こすことがある。

 

注意事項

酸化マグネシウムは、一般的に安全な薬であるが、以下の患者に対しては慎重に使用する必要がある。

 

・腎障害のある患者:酸化マグネシウムは腎臓で処理されるため、腎障害のある患者では高マグネシウム血症のリスクが高くなる。そのため、事前に患者の腎機能を確認し、投与中は定期的に血中マグネシウム濃度をモニタリングする必要がある。
・心機能障害のある患者:酸化マグネシウムは徐脈を引き起こす可能性があるため、心機能障害の症状が悪化するおそれがある。投与前には心電図を確認し、投与中は心拍数やリズムの変化に注意する。

 

特に高齢者で腎機能障害がある患者は、酸化マグネシウムの内服で高マグネシウム血症になるリスクが高く、意識障害不整脈、心停止など出現することがあるため、注意が必要である。

 

効能・効果

酸化マグネシウムは、主に制酸作用と緩下作用のある薬である。具体的な効能・効果と使用される状況は以下の通り。

 

・制酸作用:胃や十二指腸潰瘍、急性または慢性の胃炎(薬剤による胃炎も含む)、上部消化管の機能異常(神経性食思不振、胃下垂症、胃酸過多症など)において、胃酸を中和し、これらの症状を改善する。
・緩下作用:便秘症に使用される。例えば、数日間便が出ない場合や、便が硬く排便が困難な場合に効果的である。酸化マグネシウムは腸内で水分を保持し、便の量を増やして腸の運動を促進する。
尿路結石の予防:シュウ酸カルシウムによる尿路結石の発生を予防する効果がある。尿中のシュウ酸の量を減らすことで、結石の形成を抑制する。

 

用法・用量

成人に対する酸化マグネシウムの用法・用量は以下の通りである。患者の年齢や症状に応じて、医師の指示に従い用量を適宜増減する。

 

 

副作用(投与後の注意)

酸化マグネシウムの投与後、高マグネシウム血症という重大な副作用が現れることがある。この状態は、呼吸抑制、意識障害、不整脈、そして最悪の場合、心停止に至る可能性がある。この副作用を早期に発見するためには、以下の症状に特に注意する必要がある。
・悪心・嘔吐
・口渇
血圧低下
・徐脈
皮膚の潮紅(赤み)
・筋力低下
傾眠(眠気)

 

これらの症状が現れた場合、患者の血清マグネシウム濃度の測定を行う必要がある。異常が認められた場合には、投与を中止し、必要に応じて点滴による補液や、症状に合わせた対症療法を行う。

 

また、高マグネシウム血症以外にも、酸化マグネシウムには頻度が高い副作用として下痢がある。これは緩下剤としての作用によるもので、軽度であれば特に治療を必要としないことが多いが、患者の水分バランスや電解質バランスに影響を与える場合があるため、患者の状態を観察し続けることが重要である。

 

取り扱いの注意点

酸化マグネシウムを他の薬剤と併用する場合、特に注意すべき相互作用がある薬剤には以下のものがある。

 

・テトラサイクリン系抗生物質酸化マグネシウムは、テトラサイクリン系抗生物質の吸収を阻害し、その効果を低下させる可能性がある。
ビスホスホネート製剤:酸化マグネシウムはこれらの薬の吸収を妨げることがあるため、併用には注意が必要である。
鉄剤酸化マグネシウムは鉄剤の吸収を減少させる可能性がある。
・ジギタリス製剤:高マグネシウム血症はジギタリス製剤の毒性を増加させるおそれがあるため、併用時には特に注意が必要である。

 

引用・参考文献

1)酸化マグネシウム(2024年7月閲覧)

執筆: 白川和宏

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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