十二指腸潰瘍とは・・・
十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう、duodenal ulcer)とは、十二指腸粘膜の一部が、粘膜筋板よりも深くまで欠損した状態のことである。
好発年齢は20~30代がピークであり、十二指腸球部に発生することが多い。
正常な状態では、胃酸や消化酵素(攻撃因子)から粘膜を保護するために、さまざまな防御因子が働いている。しかし、何らかの原因で攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることで十二指腸潰瘍は発生するとされる。
要因
要因としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)が重要と言われている。
NSAIDsは鎮痛薬や抗血小板薬などに使われている薬であるが、粘膜保護にかかわる酵素の合成を阻害すること(COX阻害作用)で防御因子が弱まり、十二指腸潰瘍を発症する。
H.pyloriは胃酸の中でも生息できる細菌であり、十二指腸粘膜の傷害を引き起こすことで十二指腸潰瘍の原因となる。十二指腸潰瘍は胃潰瘍よりもH.pyloriの関連が多いとされている。
症状
十二指腸潰瘍の症状としては、心窩部痛、不快感、嘔気/嘔吐、食思不振などの症状を呈することがある。自覚症状を全く認めない場合もある。心窩部痛は空腹時に起こりやすい。
合併症
起こり得る合併症としては、大量出血による吐血がある。大量吐血でショック状態の場合などには、緊急の内視鏡的止血術が必要となる。
もう一つの重要な合併症として、潰瘍が深くなると消化管穿孔を引き起こすことがあり、注意が必要である。特に、十二指腸壁は胃壁と比べて筋層が薄いため、深く進行し、出血や消化管穿孔を起こしやすいとされる。
治療
合併症に対する治療とともに、潰瘍に対する治療を行う。基本的にはNSAIDsなどの原因となり得る薬剤の中止やプロトンポンプ阻害薬(Proton pump Inhibitor; PPI)もしくはH2受容体拮抗薬(H2 receptor antagonist; H2RA)の投与を行う。H.pyloriが陽性であれば、潰瘍再発防止のため、慢性期に除菌を行う。