腰椎穿刺(脳脊髄液検査)|脳・神経系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、腰椎穿刺(脳脊髄液検査)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
腰椎穿刺とはどんな検査か
腰椎穿刺とは、腰椎クモ膜下腔よりスパイナル針で穿刺し、髄液の一部を採取することで、髄液の測定および診断を行う検査である(表1)。腰椎穿刺は、治療を行う手段として用いられることもある。
腰椎穿刺の目的
- 腰椎穿刺は、腰椎クモ膜下腔から髄液を採取し、クモ膜下出血、髄膜炎の診断を行う。また、悪性腫瘍の腫瘍マーカーなどの測定もできる。
- 髄膜炎や悪性腫瘍の髄腔内播種に対する治療として、薬液を直接クモ膜下腔内に注入するため、腰椎穿刺を行うこともある。
- 腰椎穿刺は頭蓋内圧を測定する1つの方法でもある。しかし、頭蓋内圧が高い場合には、原則として禁忌である。
腰椎穿刺の実際
・ベッドの端に患者の身体を寄せ、側臥位をとらせる。
・両膝を曲げ、腹部に引き付けるようにして両手で抱え込み、顎を胸に近づける。
・背はエビのように丸くし、腰椎骨間腔をできるだけ開くようにする。
- ⑥必要物品を無菌的に準備する。
- ⑦医師に消毒薬(イソジン)を渡す。
- ⑧医師は滅菌手袋をつけ、穴あき布片を穿刺部位が中心なるようにかける。
- ⑨医師に注射器を渡し、局所麻酔薬を無菌的に吸えるように介助する。
- ⑩局所麻酔後、クモ膜下腔に穿刺をする。
・ 穿刺部位:ヤコビー線上の第4腰椎棘突起を目安に、第3 ・4腰椎間または第4 ・5腰椎間に穿刺する。 - ⑪看護師は穿刺中に患者が体位を保持できるよう体を支えながら、声かけや意識状態の観察を行う(図2)。
- ⑫初圧の確認を行う。
- ⑬医師の指示により、クエッケンステットテストの介助を行う。
- ⑭採取した髄液を滅菌スピッツに入れる(採取した髄液の量、性状、色調を観察する)。
- ⑮終圧を確認する。
- ⑯薬剤を注入する際は無菌的に準備をして薬剤を渡す(薬剤注入時は、終圧の測定は行わない)。
- ⑰穿刺針の抜去後、滅菌ガーゼを医師に渡し、穿刺部位を圧迫する。髄液の漏れのないことと止血を確認後、医師に消毒薬(イソジン)を渡しガーゼ保護し固定用テープで固定する。
- ⑱体位を仰臥位にし、バイタルサインの測定・観察を行う。
- ⑲ベッドの高さを戻し、ナースコールを患者の手元に設置し、安静時間の説明を行う。
- ⑳使用物品の片付けを行う。
腰椎穿刺前後の看護の手順
1)患者への説明
- 腰椎穿刺は患者によって目的が異なるため、医師に確認し、患者に適した説明を行う必要がある。
- 穿刺時、身体的苦痛を伴う検査である。また検査後も低髄圧症をきたすこともあるため、安静が強いられる検査であり、十分な説明が必要である。
2)検査前の処置
・ルンバールセット ・蒸発皿 ・消毒薬(イソジン) ・穴あき滅菌布片 ・処置用シーツ ・滅菌手袋 ・滅菌ガーゼ ・鑷子 ・5mL、10mLシリンジ ・23G注射針 ・局所麻酔薬 ・滅菌スピッツ3~4本 ・固定用テープ ・膿盆、鋭利物廃棄ボックス
- ④医師が施行しやすい環境をつくる(ベッドと椅子の位置調整や高さ、照明など)。
- ⑤滅菌操作で行える空間を作る。
3)検査中
- ①不必要な露出は避け、保温に注意する。
- ②患者の体位の介助をし、適時声かけを行い不安の軽減に努める。
- ③穿刺中の患者の状態を観察し、異常時は医師に報告する(下肢のしびれ、顔色、脈拍、呼吸の変化、頭痛、悪心の有無)。
4)検査後の管理
- ①バイタルサインを測定し、意識レベル、瞳孔、頭痛、嘔気、めまいの有無の観察を行う。
- ②頭部を高くすると、低髄圧性の頭痛を生じるため、枕を外した仰臥位で1~2時間安静を保つよう説明し、ナースコールを患者の手元に設置し、何かあれば押すように説明する。
- ③安静時間が終了したらバイタルサイン測定・観察(穿刺部位の疼痛、出血、滲出液、発赤、腫脹、ガーゼ上汚染、頭痛、吐気、嘔吐、下肢のしびれ)を行い安静解除とする。
- ④検査翌日、穿刺部位を観察・消毒し絆創膏を貼る。異常がなければ入浴許可する。
腰椎穿刺において注意すべきこと
- 患者の体位を介助するときは、患者の首と膝を支え、患者の背面が床と垂直になるように抱え込む。圧の動揺を防ぐために力んだりせず、静かに呼吸をするように説明する(咳や腹圧をかけると髄液圧が高くなる)。
- 患者の背中側で医師が操作する検査であり、患者は状況が見えず不安を抱きやすい。看護師は検査の進行状況を適時説明し、リラックスするように介助する。
腰椎穿刺現場での患者との問答例
これから、腰の所から針を刺して髄液の検査を行います。検査時間はだいたい20~30分程度です。
痛いですか。
少し痛いと思いますが、痛みを取るように麻酔の注射をしてから行います。でも、痛みが強かったり、気分が悪くなるようでしたら、そばにいますので我慢なさらずにおっしゃって下さい。
検査の後は、すぐに動けますか。
すぐに動いてしまうと、頭が痛くなったり、気分が悪くなってしまうこともあるので、2時間位ベッドで横になってもらうことになります。何かあれば遠慮せずナースに声をかけてください。
わかりました。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版