脊髄造影|脳・神経系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、脊髄造影について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

脊髄造影とはどんな検査か

脊髄造影とは、クモ膜下腔に造影剤を注入し、X線で撮影する検査である。脊髄造影は腰椎穿刺と後頭下穿刺の2つの方法があるが、通常、腰椎穿刺で施行される。

 

脊髄造影の目的

  • 脊髄のレベルでクモ膜下腔の閉塞(完全あるいは不完全)があるかを確認する。クモ膜下腔の閉塞を起こす疾患としては、脊髄腫瘍、様々な原因による脊柱管狭窄症、脊髄膜の癒着などがある。
  • クモ膜下腔の形態の異常を生じる疾患の診断を行う。例えば、椎間板ヘルニアは部分的な圧迫の診断や神経根の像の欠損が確認できる。
  • CTの前処置としての造影を行い、脊髄や脊椎の疾患の診断を得る。

 

脊髄造影の実際

  • 検査の説明をする。
  • 患者を撮影台の上に移動し、左側臥位として、腰椎穿刺と同様の体位をとる。
  • 検査の方法は、腰椎穿刺の項目を参照。

 

脊髄造影前後の看護の手順

脊髄造影に関する患者への説明

  1. 検査の方法、目的について医師から説明を受け、理解度などの反応を確認する。
  2. 検査前日から行う処置や検査後の安静について説明する。穿刺時、身体的苦痛を伴う。また、造影剤が頭蓋内に入らないように頭部を30°程度上げたまま3時間の安静が強いられる検査であるため、十分な説明が必要である

 

脊髄造影前日の処置

  1. 穿刺部の保清、医師の指示により剃毛を行う。
  2. 検査室に持参するものを確認し準備する。

 

脊髄造影当日

検査前1食は食止めにする。

 

  1. 排尿を済ませ、血管確保を行い医師の指示に従い輸液を開始する。
  2. 貴重品を除去し、ストレッチャーで検査室へ移送する。
  3. 検査室で必要事項の申し送りを行う。

 

脊髄造影に準備するもの

・腰椎穿刺セット ・滅菌布片(穴あき) ・滅菌手袋 ・消毒液 ・注射器 ・注射針 ・局所麻酔薬 ・造影剤 ・滅菌スピッツ ・滅菌ガーゼ ・膿盆鑷子 ・処置用シーツ ・点滴棒 ・プロテクター ・バスタオル ・必要時体交用枕 ・テープ

 

脊髄造影中

  1. 申し送りを受けたら患者を撮影台に移動し、上半身の病衣を脱いでもらいバスタオルで覆う。
  2. バイタルサインを測定する。
  3. 患者を左側臥位にして腰椎穿刺と同様の体位を保持する。適時声かけを行い不安の軽減に努める。
  4. 医師が穿刺部位を消毒し、局所麻酔をする。
  5. 穿刺中に動くと危険であること、激痛などを感じた際にはすぐに申し出るよう患者に説明し、協力を得る。
  6. プロテクターを着け、必要物品を無菌的に準備・介助する。
  7. 穿刺中の患者の状態を観察し、異常時は医師に報告する(下肢のしびれ、顔色、脈拍呼吸の変化、頭痛、悪心の有無)。
  8. 穿刺後、髄液の流出が確認されたら、髄圧測定を行う。
  9. 医師の指示により、クエッケンステットテストの介助を行う。
    *クエッケンステットテスト:患者の頸静脈を10秒程度圧迫し、圧上昇の有無を確認する(圧迫時150~300㎜H2Oに上昇し、手を離すと下降する)。
  10. 採取した髄液を滅菌スピッツに入れる(採取した髄液の量、性状、色調を観察する)。
  11. 造影剤を注入後、穿刺針を抜去し、消毒をしてガーゼ保護し固定用テープで固定する。
  12. 体位を仰臥位にし、バイタルサインの測定・観察を行う。
  13. ストレッチャーへ移動し、病衣を整える。
  14. 検査の内容・使用薬剤・観察事項は継時的に検査報告書に記載し申し送りをする。
  15. 使用物品の片付けを行う。

 

脊髄造影後の管理

  1. バイタルサインを測定し、意識レベル、瞳孔、頭痛、吐気、めまいの有無を観察する。
  2. 造影剤の上昇を防ぐため、頭部を45°〜60°挙上して移送する。
  3. 帰室後は頭部を30°挙上し、3時間床上安静を保つ。ナースコールを患者の手元に設置し、何かあれば押すように説明する。
  4. 医師の指示により、適時バイタルサイン測定、髄膜刺激症状(頸部硬直・頭痛・嘔吐など)、造影剤の副作用の観察を行い、異常時は医師に報告する。
  5. 医師の指示により、飲水・食事を開始する。(飲水困難時や造影剤の排泄不良時は、輸液の追加を確認する)
  6. 3時間後バイタルサイン測定・観察(穿刺部位の疼痛、出血、浸出液、発赤、腫脹、ガーゼ上汚染、頭痛、吐気、嘔吐、下肢のしびれなど)を行い安静解除とする。
  7. 検査翌日、穿刺部位を観察・消毒し絆創膏を貼る。異常がなければ入浴許可する。

 

脊髄造影において注意すべきこと

  • 苦痛を伴う検査のため、検査の目的、方法、注意点について十分に説明しておく。
  • 検査時には、言葉かけ、手を握るなど患者の不安の軽減に努める。
  • 検査後、安静時間が長くベッド上での排泄となるため、患者に遠慮せず看護師を呼ぶように声かけをしておく。
  • 造影剤の排泄を促すために多めの水分を摂取するように説明する。

 

脊髄造影現場での患者との問答例

痛みのある検査なんでしょうか。検査後も動けなくて大変そうですね。

 

この検査は、病気の診断を行うためにとても大切な検査です。多少の痛みはありますが、麻酔薬を使用し、少しでも痛みがないように行います。検査中、痛みがひどい時や気分が悪いようでしたら、いつでもそばにいる看護師に声をかけてください。
また、検査後、安静が必要となりますが、身の周りのことやトイレのときには看護師が介助しますので遠慮せずに看護師を呼んでください。

 

わかりました。麻酔薬を使うと聞いて少しホッとしました。検査の後は、何かあれば看護師さんを呼ぶようにします。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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