医師との衝突アンケート|看護師の9割が医師との“バトル”を経験
【日経メディカルAナーシング Pick up】
看護師の約9割が、臨床現場において医師との間で言い争いなどの“衝突(バトル)”を経験しており、うち4割は数カ月に1回以上の頻度でたびたび衝突していることが、日経メディカルAナーシング会員を対象に行った調査で明らかになった。今年1月に日経メディカルOnlineの医師会員を対象に実施した調査結果に比べ、衝突頻度は高い傾向だった。
(井田恭子=日経メディカル)
調査は2月24日~3月31日に実施し、118人が回答した。全体の89%が医師との衝突の経験が「ある」と答えた(図1左)。衝突の頻度については、「数カ月に1回くらい」(26.7%)、「年に1回くらい」(21.9%)で全体の4割を占めたが、「日常的に衝突している」と答えた看護師も13.3%いた(図1右)。
図1 これまでに医師と“衝突”した経験は?
衝突の内容については、「患者の治療方針に関すること」(53.3%)が最も多く、「病棟や外来の業務に関すること」(51.4%)、「患者・家族とのコミュニケーションに関すること」(44.8%)が続いた(図2)。
図2 衝突の内容は?(複数回答)
これまでの衝突の中で印象的だったエピソードについて聞いたところ、
患者の治療方針に関することでは、
「SCUに入院中の脳外科患者に不整脈が頻発し、状態が徐々に悪化していた。循環器内科へのコンサルトを求めたが、主治医が『自分で管理できる』と頑なに言い張り口論になった」(勤務先:大学病院、臨床経験年数:10~15年、以下同)
「高齢の認知症患者の合併症治療の際、医師の価値観で『延命処置はしない』と言って家族に一方的に説明したため、倫理的に問題があると抵抗した」(民間病院、25年超)
など、看護師のおかしいとの指摘を医師が聞き入れず口論に発展したケースが多く寄せられた。
中には、「適正使用ではないと思われる抗菌薬の投与に関して尋ねたら、『看護師のくせに』と言われた」(民間病院、20~25年)人も。
病棟や外来業務に関することでは、
「指示出しは15時までと決まっているのに出ていなかったり、時間外に指示を出した場合に声を掛けてもらえないとき。結果として、治療や薬の変更などを時間通りに実施できない」(教育・研究機関、15~20年)
「緊急入院の患者を医師の都合だけでどんどん受け入れようとしたので、『ほかの入院患者の安全が守れない』と戦った」(大学病院、15~20年)
など、指示出しのタイミングや時間外入院の受け入れ場面での衝突エピソードが目立った。
先の医師調査ではこれらについて、看護師に臨機応変な対応を求める声が多数寄せられており、職種間の認識の違いが浮き彫りとなった。
また、
「手術中に集中すると小声になる外科医に聞き返したら怒鳴られ、器械を投げつけられた」(公的病院、15~20年)
「外来が混雑し、人員不足の中でさまざまな業務を同時に行わなければならない状況だったにもかかわらず、医師から『なぜもっと早くカルテを持ってこられないのか』と言われ、そばにあったトレーを投げられた」(国公立病院、5~10年)
など、衝突というより医師から一方的にイライラをぶつけられたエピソードも散見された。
患者・家族とのコミュニケーションに関することでは、
「患者さんへのがん治療の説明が不足しており不安になっていたため、再度説明してほしいと医師に何度も伝えたがしてもらえず、患者さんが医療不信に陥った。自分だけ面倒なことを避けようとする医師の態度に腹が立った」(大学病院、20~25年)
「早く退院したいとの思いを患者に代わって主治医に報告したところ、詳しいことも聞かずに『だったら主治医はお前がしろ!』と勝手に怒り出した」(15~20年、国公立病院)
など、患者にとって身近な存在である看護師が、患者の想いを医師に代弁しようとして衝突に発展するケースが多かった。
「チーム医療が重要」とは言うけれど…
調査ではこのほか、「現在の職場で最もいらっとする医師の態度」についても尋ねた。
すると、前述のエピソードを反映するように、「看護師の意見を聞き入れようとしない」(26%)が最も多く、「患者・家族の意向を聞かない」(18%)、「主治医としての方針や見解を看護師に伝えない」(12%)、「あいさつなどのコミュニケーションを取らない」(12%)が続いた(図3)。
図3 現在の職場で最もいらっと感じる医師の態度は?
これに関連して、自由意見欄には医師に対するさまざまな本音が寄せられた。
「現在の職場の医師は看護師を医療の助手としか考えていない。チーム医療という文化はなくコミュニケーションは表面的。気の毒なのは患者である」(民間病院、20~25年)
「自分の思い通りにならないと看護師に対して暴言を吐く医師。気に入らないことがあると『俺ばっかりが忙しいのに(なぜ気を遣えない)』と言う医師。椅子をけとばすなど物に当たって威嚇する医師。何とも時代錯誤な人が多い」(民間病院、20~25年)
「自分の考え方が正しいと過信し人の意見を聞こうとしない、頭ごなしに看護師は勉強が足りないとけなす医師には本当にイラつく」(公的病院、25年超)、「連携が叫ばれているのに、未だに『俺様』『お医者様』的な考えが現場に受け継がれている」(国公立病院、20~25年)
「忙しいとイライラするのは分かるし、『しゃべりかけるな』オーラを全開にするのはしょうがない。看護師はそれでも医師への報告や指示確認が必要な時があり、気を遣いながら声を掛けていることに気付いてほしい」。
民間病院に勤める中堅看護師はこう訴える。
一方で、「看護師が最新の知識やエビデンスをちゃんと持ちながら話さなければ、医師に聞いてもらえない。我々のスキルアップも必要」(民間病院、20~25年)といった意見も。
また男性看護師からは、
「要領を得ない報告をする看護師が多い中、医師はよく理解して対応してくれていると思う」(公的病院、15~20年)
「医師と看護師の衝突は、看護師側が『なんで理解してくれないんだ!』と感情的になっているパターンが多いように感じる。しかもそのできごとを周囲のスタッフに愚痴として伝え、聞いた看護師も鵜呑みにしてグループを形成してしまうのが、看護師の良くないところ」(民間病院、5~10年)
など、一歩引いた意見も聞かれた。
職種は違えど、患者のために良い医療を提供したいという思いは、医師も看護師も同じだ。
「互いを思いやる気持ちと、患者さんを思う気持ちがあれば、本来コミュニケーションに問題が起こるはずはない」と民間病院に勤めるベテラン看護師は指摘する。
例えば、時間外の指示受けが難しい理由について国公立病院の中堅看護師は、「夜は1人の看護師で20人の患者を看ている。重症者対応や看取りだけでも数時間かかる上、認知症・不穏患者の付き添い、手術前後の準備や処置・ケア、緊急入院への対応などしているとそれだけで朝が来る。朝になれば一斉に朝のケアへのナースコールが鳴る。もし日中に指示受けができれば、余裕をもって確認できる」と事情を説明する。
と同時に、「看護師側があらかじめ緊急時の指示をもらったり、情報収集や簡潔な伝え方を工夫することで、医師側の負担も減らせる」とし、互いの状況を理解した上での連携の重要性を述べる。
看護師の役割について理解を求める声もあった。
「医者がそれぞれの患者と対面する時間は限られているが、すべての時間に関わっている看護師は、患者の生活面や状態を把握している。医者とは役割が違うし意見を尊重してもらえたら、もっと違う関わり方ができるのではないかと思う。コミュニケーションが取りやすい医師はその点を理解してくれている人が多い」(大学病院、10~15年)
「全部を聞き入れてほしいわけではないが、話し合いの場を持ってほしいし、互いをそれぞれの『持ち場のプロ』だと認識して対話してほしい。その分、私たちもプロでいられるよう努力したいと思う」。民間病院のベテラン看護師はこうコメントを寄せた。
まだまだある!医師との“衝突”エピソード(アンケート自由回答欄より抜粋・編集)
<患者の治療方針に関すること>
◆SCUに入院中の脳外科の患者。不整脈が頻発し状態が徐々に悪化していたため、循環器内科にコンサルトしてほしいと主治医に言ったが、「自分で管理できる」と頑なに言い張り、口論になった。ちょうど別の患者を診に来ていた循内の医者が「気になるから診たい」と気遣って介入してくれ、診てもらえた。(現在の勤務先:大学病院、臨床経験年数:10~15年)
◆夜間、心不全の救急患者が搬送された。胸部X線上、明らかに肺水腫も起こしていそうなのに、当直医が脱水と診断し輸液を大量投与する指示を出した。明らかに従えない指示だったので、口論となった。その後、オーベン医師に来てもらい、後からナースサイドの見立てが正しいことが判明したが、結局 患者さんは亡くなった。(一般企業、15~20年)
◆昼夜しゃべり続ける患者に「せん妄だから」と眠剤を処方しない研修医がいた。同室者からも苦情が出ていると電話で伝えても「あっそう」との返事。ベッド柵に足や頭を挟むほどの興奮状態だったにもかかわらず、抑制も許可してくれなかった。たまたま病棟に来た指導医に泣きつき、眠剤を出してもらった。(民間病院、20~25年)
◆呼吸困難感が増強しているターミナル患者に対し、「モルヒネを使用していい思いをしたことがない」という個人的な理由で家族に緩和の方法を説明せず、最後までモルヒネを使わなかった。(国公立病院、3~5年)
◆PEG周囲からの栄養剤漏れや回転不良があり癒着が疑われる患者がいたので施術医に報告したが、「回らないのは固定されている証拠。回らないもの出し回す必要はない」などと答え取り合おうとしなかった。仕方なく別の内科医に胃カメラを入れてもらったら、バンパー埋没症候群が起きていた。(民間病院、10~15年)
◆認知症高齢者の診察時、自宅で家族も大変困っていることを再三説明したが、医師が認知症であることを認めずに何の処方も対策もなされなかった。結果として、患者家族の生活が崩壊してしまった。(訪問看護ステーション、25年超)
◆1型糖尿病の患児に対する初期処置の開始と治療の説明を私に投げてきた医師がいた。医師が家族と何も話をしていないのに私からは説明できないと言ったら、「治療方針の説明は必要ない」と返された。その日に診断されたばかりで家族が混乱している中、治療方針の説明はおろか何の会話もせずに治療だけ始めろとは無茶だ。(国公立病院、15~20年)
<病棟や外来などの業務に関すること>
◆手術で直接介助中、医師が「コッヘル」というのでコッヘルを渡すと、「なんだ!これは!ペアンといっただろ!」とキレられコッヘルを投げつけられた。介助者全員「なんでここでコッヘルなんて使うのか」と思っていたが、もともと突飛な医師なのでそのまま渡したのに……(ほかの医師だったら、言い間違いかと思いペアンを渡していたが)。手術に一緒に入っていたほかの医師は、私に気持ちを抑えるようにジェスチャーをしていたが、その後も術中いろんなことがあり、結局頭にきて途中で直接介助を降りた。(公的病院、25年超)
◆医師の指示忘れがあったとき、「看護師もフォローしてほしい」と看護師に責任転嫁された。フォローはしているが、自分たちも気を付けると言ってもらえたら今後もフォローしようと思うが、看護師が悪いと言われるのは筋違いだと思う。(大学病院、20~25年)
◆夜中に患者さんが急変したので、当直医へ連絡をしたがつながらず。新人だった私が当直室へ行くとテーブルにPHSが置き去りになったままで、当直医は仮眠室で眠っていた。事態が事態だったので仮眠室のドアをノックし当直医を起こしたところ、開口一番「なんて無礼な奴だ!」と怒鳴られた。当時は私も血の気が多かったので、「どこで何をしていてもピッチは肌身離さず持ってろ!」と言い返し、病棟へ帰った。あの後からその医師は、どことなく私のご機嫌を伺って業務をこなしていた。(民間病院、15~20年)
◆大学からの派遣で2年ごとに医師が替わるのだが、赴任するなり「ここのシステムはおかしい」と赴任前に働いていた病院のやり方で業務をやり通そうとする医師がいた。当然、スタッフと衝突となったため、管理者の私が当該医師に協力を求めたところ、「ここは働かない看護師ばかりだ」とののしられた。(公的病院、20~25年)
◆医師が口頭指示のみで病院のシステム通りに指示を出していなかったにもかかわらず、看護師が指示を実施していないことに激怒した。システム通りに指示を出していないのが原因だと衝突した。(民間病院、5~10年)
◆院内感染対策ラウンドで手指衛生を行わない医師に注意すると、「そんな暇はないんだよ」「あーはいはい」とあしらわれた。(大学病院、25年超)
<患者・家族とのコミュニケーションに関すること>
◆医師のインフォームドコンセントがあまりにも分かりにくくフォローが大変で、医師にそれとなく言ったが理解してもらえず逆切れされた。(民間病院、20~25年)
◆下半身不随になった患者に対して、消灯前の大部屋でそのことを説明したとき。話をすることを、事前に看護師にも伝えていなかった。その患者は動けることを信じてずっとリハビリを頑張っていたのだが、その日の夜に「もう歩けないんだって」と、気丈に話してくれたことを今でも忘れない。(一般企業、5~10年)
◆待合室で小児が高熱で辛そうにしていたので、静養室のベッドで診察の順番待ちをしてもらっていた。診察の順番になったので、医師に診察室から静養室(すぐ隣)への移動を依頼すると、「診察室にも来られないような重症患者は診ない」と言い放たれた。再度依頼したが押し問答となり、仕方なく患児に移動してもらった。思いやりのない人だとがっかりした。(公的病院、15~20年)
◆患者に対して誠意のない態度や発言をしたので指摘したら、「看護師のくせにうるさい」と言われたため「医者がそんなに偉いんか!」と怒鳴ったら黙りこんだ。この医師の上級医と知り合いだったのですべて報告し、左遷してもらった。(民間病院、15~20年)
<職場の人間関係に関すること>
◆医師お気に入りのナースがおり、仕事中、彼女にだけ態度が違うのが嫌だと遠回しに伝えたところ、医師にその自覚がなく不毛の問答となり、こちらがますます立場が悪くなった。(診療所、20~25年)
◆医療事故が起きた時に、主治医がその時担当だった受け持ち看護師を責めたため、看護師長として主治医に「個人攻撃はやめてください」と抗議し、ちょっとした喧嘩になった。(介護系事業所、20~25年)
◆看護師の経験年数も考えず、若い看護師に「~やっといて」と頼む医師。「できない」と言うと「〇〇さんはやってくれたよ…」と言い、困ったスタッフが私に報告してきたので医師に注意した。後日「ちくったでしょ」とスタッフに文句を言ってきた。(大学病院、25年超)
◆「収入をあげているのは、医師。患者を集めているのも医師。看護師は医師の介助。診察、手術に協力していればいい」と言われた。(民間病院、25年超)
<掲載元>
Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら。
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